*魂の次元* (by としべえ)

肩から力を抜いて、自由に楽しく生きる。

ネットでの新刊購入は全体の1割、「文字もの」電子書籍は「紙」の4%、縮みゆく出版業界の明日はどっちだ!?

仲俣暁生さんというフリー編集者の方が、
出版業界は沈みゆく泥舟なのか « マガジン航[kɔː]
という刺激的なタイトルで、日本における出版の現状について記事を書いています。

こちらの記事の内容を紹介するとともに、そこについたブックマーク・コメントも眺めながら、出版社と書籍の未来について考えてみることにしましょう。

インターネット経由の新刊購入は市場全体の1割程度、「文字もの」電子書籍の市場規模は「紙」の書籍の4パーセント程度

ネットをよく使い、アマゾンで本を買うのは当たり前、電子書籍もそれなりに購入する、というみなさんからすれば、

  • インターネット経由の新刊購入は市場全体の1割程度で、
  • 「文字もの」電子書籍の市場規模は「紙」の書籍の4パーセント程度、

というのは、

  • 「えーっ、たったそんだけなのーー!!」

という意外な数字かもしれません。

とはいう、書籍という商品の性質と、出版業界のあり方を考えると、この程度の数字なのは当たり前のことかもしれません。

仲俣さんは、出版業界全体が縮小傾向にある中、漫画は電子書籍化が進んでいることも踏まえ、「文字もの」についても

  • 「完全に曲がり角に来ている出版流通自体をなんとかしなければいけない」

という意味のことを述べています。

残念ながら、仲俣さんにも妙案はないようですが、まずは

  • ネット経由の新刊購入を伸ばすために、ネット上での書籍紹介の場が必要、

ということで、ご自分の関わっている
Socrates(ソクラテス) – 世界を生きる知恵
というサイトを紹介しています。

こうした試みが出版の活性化にどの程度有効かは未知数ですが、ネット上に流れる書籍情報が多様化することはまったく歓迎すべきことです。

日本の出版界という「泥舟」の輝かしい未来に期待が膨らみますよね。

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電子書籍の「コストパフォーマンスの悪さ」と「売る気のなさ」

ブックマーク・コメントでは id:satomi_hanten さんが、

コミックは紙と同発が増えたのに対し(遅くても1か月遅れが多い)文庫は同発はまずないし1か月遅れは早い方。※ラノベは除く 且つ、電子嫌いの大物が多く品ぞろえもコミックに比べかなり悪い。トリガーが引けてない

と書いています。

また、id:PEH01404さんは、

「文字もの」電子書籍が未だに紙の4%なのは、コストパフォーマンスがわるいからだ。用紙代・印刷代・流通経費が不要なのに価格がたいして変わらない。コミックでは頻繁にあるセールも少ない。要は売る気がない。

と書いています。

id:ykhmfst2012さんは、

メジャー作家だと ハードカバー → 文庫 → 電書と来るから、電書で読めるようになるのは初出から3年後くらいでしょ。それで値段がハードカバー並とか表紙デザイン全カットとか基本的に客を舐めてる。売る気がない。

とのこと。

結局、漫画はもはや、電子書籍を本気でやらなければならないところに来ているのに対して、

  • 「文字もの」はまだまだそこまで来ていない、

ということなんでしょうね。

一方、id:synopsesさんが、

小説は場所とらないから実物でいい。マンガ・雑誌(モノによってはラノベも)は物理的に邪魔なので電書がベター。技術書は検索したいから電書が欲しくなる/PDFがDLできる翔泳社がサイコー

(強調は引用者)
と書くように、読者の利便性に配慮した販売法を取っている出版社もあり、書籍全体の市場は縮小しても、その中でどうやって読者の期待に答えるか、ということが、結局は出版業の未来を左右するのは間違いないでしょう。

電子書籍については、読者の立場からすれば、

  • 「用紙代・印刷代・流通経費が不要なのに価格がたいして変わらない」

のは、確かに納得がいかないところです。

これば、出版社と著者だけの立場からすれば、

  • 出版社の必要コストと著者の印税だけに絞って格安で販売する、

という方法も当然ありえるはずです。

しかしながら、印刷会社、取次、書店の存在を考えると、旧来型の出版社がそのような方針で書籍を販売する可能性は限りなく低いと思われます。

となれば、ここは起業家の方が、斬新なアイディアで電子書籍専門の会社を起こしてくれるのに期待したいところですね。

書籍に未来はあるのか、あるいは、書籍なんて必要ないのか

さて、仲俣さんの記事に戻って、書籍の未来について改めて考えてみることにしましょう。

本がたんなる消費財でも娯楽でもなく、つねに更新されていく知恵や知識、そして創作物を伝える媒体であるならば、そのための流通経路がなくなるのは、やはり困る。雑誌やマンガ、文庫といった大部数を前提とした出版物にあわせて作られてきた日本の出版流通は、いまや完全に曲がり角に来ている。しかしだからといって、しっかりした内容の本を、それを求める(潜在的な)読者に届けるための仕組みが、まったくなくていいはずがない。

こうした大上段に振りかぶった意見に対して、

上から目線で人ごとのような記事を書いている暇があったら具体的な方策を考えましょうよ。危機感をあおるのはじじいばっかりだよ。

(id:kibiya さん)

といった意見もあり、確かにそれも言えてるな、と思います。

また、仲俣さんがここで、「消費財、娯楽」と「知恵、知識、創作物」というような分け方をしていることも、いささか時代がかった価値基準に思えますね。

そして、

  • 「書籍の流通経路」としての「読者に届けるための仕組み」が必要だ、

というだけで、実質的に具体策を持っていない点は、はなはだ弱い論になってしまっているところです。

そのとき、id:otchy210さんの

出版業界を紙を印刷する業界とすれば沈んでいくし、"本" を作る業界としても長期には沈んでいくだろう。文章や図画を編纂し人々に提供する業界として、紙でも電子でもウェブでも媒体に拘らなければ沈みはしまい。

という指摘はまったく妥当なものだと思います。

うん十年も前から、若者の書籍離れが「問題」とされてきましたが、極論を言えば、本など読まなくても世の中は回っていくのですから、紙の書籍などなくなっても、「人類の知」は別の形で伝わっていくだけのことです。

そういう意味では

  • 「書籍など必要ない」

といってかまわないのですが、一方でぼくは、

  • 「書籍には豊かな未来が残っている」

と思っています。

id:nisisinjukuさんは、

テレビが死にラジオはソフトが老衰。本は古典芸能化。

と書いていますが、「古典芸能化」おおいに結構と思います。

クラシックカーを愛する人が絶えないように、クラシック音楽が現代でも新しい命を授かり続けているように、「書籍」というパッケージも古めかしく味わいのある技術として、人類の存在する限り、永遠の命を持つのは「自明」のことに思えます。

コレクターは古書を珍重して集め続けるでしょうし、書籍の販売が仮にすべて電子化されたとしても、オンデマンドで印刷・製本するサービスはいつの世も重宝されるでしょう。

そして、おもしろい文章、価値ある情報をキュレートし、編集する能力のある人は、「『文字もの』のDJ/ユーチューバー」として大いに活躍していくに違いありません。

そんな未来の出版状況を夢見ながら、ネットの大海原を彷徨うのも、趣きのある暇つぶしではありませんか。

てなところで、この記事はおしまいです。
それではみなさん、ナマステジーっ♬

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(いらすとやさんの画像を加工して利用させて頂いています)

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