note.mu で公開されている生活学習さんの漫画

タイトルは物騒ですが、心を揺さぶるインパクトがあり、深く考えさせられる作品です。

線維筋痛症を患い、苦労して毎日を生きている生活学習さんが、通りすがりの男たちから侮蔑の言葉を投げかけられた経験が、激アツの筆致で描かれています。

見下された者の悲痛な叫び、「お前らを殺してやるからな」

お前らを殺してやるからな
(画像は生活学習さんのnote.muのページより再掲、ご本人に許可をいただいています)

2018年10月31日16時半頃、杖をついて薬局に入っていく坊主頭の私を見て、「初老だねえ!!」と言って笑った2人組の男どもに告ぐ。

殺してやるからな。

殺人予告|生活学習|note

記事タイトルでは分かりやすさを優先して「女性蔑視」と書きましたが、「男たち」の言葉には、

  • 若くて美しい女性以外は価値がない

という偏見だけでなく、弱いもの、苦しみを背負っているものに対する侮蔑の込められています。

現在の日本社会に蔓延している「弱者蔑視」を象徴する場面です。

この不愉快きわまりない言葉に、作者が感じたとてつもない怒りが、1ページ目で十二分に炸裂しています。

「殺してやる」という強烈な言葉と、終始一貫して「笑顔」で描かれる「語り手=作者」の表情のギャップに、怒りに震えながらも、その状況と心境を冷静に描写しようとする作者の「執念」を感じます。

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「殺してやる」という言葉に象徴的に込められた作者の思い

『殺人予告』というタイトルといい、「お前らを殺してやるからな」というセリフといい、過激きわまりない表現ですが、作者は暴力を肯定しているのではありません。

この漫画は、侮蔑によって引き起こされた収まりようのない怒りを原動力に、わたしたちが住む「弱者蔑視の社会」を変えるために描かれています。

お前らが窮屈で暮らせなくなる世界を、態度を改めなければ生きていけない世界を作るまで

作者が「殺す」と言っているのは、現実社会での暴力を振るうということではなく、漫画という表現によって、「弱者蔑視」がまかり通る社会のあり方を変えていく、ということです。

ですから、

お前らが窮屈で暮らせなくなる世界を、態度を改めなければ生きていけない世界を作るまで、

殺人予告|生活学習|note

作者は「弱者を蔑視する者」を「殺し続ける」のです。

この「殺す」という表現が強すぎると思い、違和感を持つ人がいること、なんでここまでの言葉を使うのか、という異論があるのも分かりますが、作者の思いはこの言葉なしには表現できなかったに違いないと思うのです。

日常的に刺激的な表現が溢れかえって、感覚が麻痺しがちな読者に向けて、十分に声を届けるためには、このくらい過激な表現をして丁度いいくらいではないでしょうか。

漫画『警察をクビになった話』のハルオサンに続く、ヘタウマ・ネット漫画の新しい波

生活学習さんは「事件」があったその日のうちに、12ページの漫画を描いてツイッターに3つのツイートとして投稿し、さらにnote.muにもまとめて掲載しています。

勢いで描いているので、若干雑な印象も受けますが、そのときまさに感じていたリアルな怒りに裏打ちされているために、多くの人の心を動かしたものと言えるでしょう。

生活学習 on Twitter: "『殺人予告』①… "
は、21,000 リツイート(2, 3 も合わせると全部で37,000)され、

殺人予告|生活学習|note
には、はてなブックマークが 757 ついています。

先日紹介したはてなブログで活動しているハルオサン

「漫画版・警察官をクビになった話」の衝撃。新時代の漫画家ハルオサン誕生す!! - *魂の次元*

とはスタイルも志向も異なりますが、商業的なうまい絵にこだわらず、ネット上で自由な表現をしている点では、生活学習さんも新しい漫画の可能性を感じさせてくれます。

このお二方に限らず、様々な形の新しい漫画の試みる方が、ネット上には無数にいらっしゃることでしょう。

これからのネット漫画の「新しい波」に大いに期待するものです。

なお、生活学習さんが普段描かれているハムスターとの共同生活や、ご病気についての漫画はこちらからまとめて読むことができます。

生活学習 on Twitter: "「うにさんと私」等まとめ
今迄描いたのをまとめてみました。「線維筋痛症と私」も入ってます。うにさんの写真もちょっと入ってます。随時更新致します
https://t.co/2zXgCpI0RJ"

線維筋痛症という「難病」

生活学習さんが患っている線維筋痛症という病気は、
線維筋痛症とは 線維筋痛症友の会 JFSA
というページによると、

全身や広範囲が痛み、またある部分だけが痛むことがあります。
その痛みは軽度のものから激痛まであり、耐え難い痛みであることが多いです。痛みの部位が移動したり、天候によって痛みの強さが変わったりすることもあります。痛みが強いと日常生活に支障をきたすことが多く、重症化すると、軽微の刺激(爪や髪への刺激、温度・湿度の変化、音など)で激痛がはしり、自力での生活は困難になりますが、重症化する前に早めに受診して対策することが必要です。

とのことです。

原因がはっきりしない難病であるにも関わらず、国が「難病指定」していないことから、患者さんは大変な思いをしています。

生活学習さんが描かれた、ご自分の病気についての漫画はこちらです。

生活学習 on Twitter: "線維筋痛症と私… "

線維筋痛症は診断できる医師も少なく、診断されないままに苦しんでいる患者さんもたくさんいると考えられています。

国はこの病気をきちんと難病指定し、患者さんの十分な救済をはかるべきではないでしょうか。*1

  *  *  *

この記事は以上です。
それではみなさん、ナマステジーっ♬

*1:海外にばらまいたり、軍事費として使う予算があったら、病者の救済も含め、国民の生活のためにしっかり税金を使ってもらいたいものだと思います。