はてなブックマークでたまたまこちらの記事を見かけました。

日本に、この人がいて、本当に良かった。 | milieu(ミリュー)

塩谷舞さんという女性の運営する個人メディア milieu の記事なのですが、デザインも内容もプロフェッショナルで素晴らしい。

その記事は、高木正勝さんのインタビュー記事で、高木さんは細田守監督のアニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」や「バケモノの子」の劇中音楽を担当した方なので、ご存じの方も多いかと思います。

塩谷さんは、記事の冒頭で、milieu というサイトを、

「社会的に意義のある記事を、広く届けなければいけない」とか
「記事を読んでくださる相手の時間を、1秒たりとも無駄にしてはいけない」とか
そんな勝手な責任感により、一所懸命にやってます。

と書いてらっしゃり、それを見てぼくは、ニッポン社会のあまりの「忙しさ」と「頑張り加減」にちょっと驚いてしまいました。

というわけで今日は、塩谷さんの記事を題材にさせていただき、「ニッポンの消耗」について考えてみたいと思います。

高木正勝の純粋欲求にしたがった「遊び」が「仕事」になる生き方

塩谷さんのこの記事は、『「全力でがんばる」症候群』にかかりやすい日本人に向けた、いわば「解毒剤」として書かれています。

高木正勝さんは、2009年のNewsweek日本版で「世界が尊敬する日本人100人」の1人に選ばれるほどの音楽家にして映像作家ですが、彼は京都との県境に近い兵庫県の山深い里、丹波篠山に住んでいます。

古民家を直して住んでいる高木さんの家で、人間型のカリンバをはじき、太鼓を叩く塩谷さんの様子は、彼女の記事で見ていただくとして、ここでは、彼女が使う「純粋欲求」という言葉を拾ってみます。

昨年、京都岡崎音楽祭2016「 OKAZAKI LOOPS 」での高木さんの演奏が『「純粋欲求」で成り立っていることに感動した』ことが今回の取材につながったと塩谷さんは言います。

そのときの演奏では、お客さんみんなが立ち上がり、西洋的なスタンディングオベーションとは違う、祭りのような状態で、「自分のズタボロな精神の穴にいのちが注がれる」感覚だったというのです。

それに答えて、高木さん自身が「あのときは、すごかったなぁ」と言っているので、それはいつもとは違った、演者と観客が一体となる「最高」の状態だったに違いありません。

ぼくもこちらのビデオを見ましたが、素朴さの中に心を動かされる何かが響いてきて、その場の雰囲気が伝わってくる、なかなかいい映像だと思います。

高木正勝 大山咲み「めぐみ」/ Takagi Masakatsu 'Megumi' - YouTube

インタビューは、時として「仕事」に押しつぶされそうになる塩谷さんが、「仕事」から距離を取って「遊び」を「仕事」にしている高木さんの、その「最高」の状態を生み出すための「魔法」について聞き出すような展開になっています。

僕は、もうちょっとはみ出していくものが好きやねんな。歌が好きな人と一緒にいて「楽しくなってきたから、歌おう!」とはじまって、どんどん、どんどんその中だけで魔法が起こっていって、その場があって、そこに参加してる人がいて、自分も参加して。踊りだしたりとか。

と高木さんは言います。

この「魔法」を起こすのが、塩谷さんのいう「純粋欲求」ということであり、高木さんが「純粋欲求」によって生まれ、形になったものを「作品」として発表している様子がインタビューからうかがわれます。

「遊びを仕事に」できないなら「仕事を遊びに」しよう

「純粋欲求」にかなった活動をして、それが「仕事」として評価されるのは、最高のことでしょう。

けれども、それは誰もができるものではありません。

となれば、収入を得るために仕事をする必要があります。

その「仕事」の重圧に押しつぶされないためには、どうしたらいいのでしょうか。

一つの方法は、「仕事」を「遊び」にすることです。

「仕事」を生真面目に考えすぎていませんか?

あまり真面目になりすぎず、「仕事」を「ゲーム」としてとらえたらどうでしょうか?

生真面目になりすぎて緊張して、いつもピリピリした気を放っていたら、うまくいくものもうまくいかなくなり、周りの人にも悪い影響が出かねません。

「ゲーム」だと思って、ゆったり構えることができれば、あなた自身も周りの人もリラックスして失敗が減り、却って仕事もはかどるのではないでしょうか。

「人の時間を1秒たりともムダにしない」から「人と一緒の時間をたとえ1秒でも大切にする」生き方へ

weblog の指南術をネットで見ていると、

「せっかく訪れてくれた読者の貴重な時間をムダにしてはいけない」

というようなことが、よく書いてあります。

weblog運営の方法論として、それはそれで「正しい」考え方だとは思うのですが、人生に「ムダ」はつきものですよね。

というか、もしあなたの人生に「ムダ」とか「遊び」とかがなかったら、窮屈すぎてつらくないですか?

仕事でも同じことです。

わざわざムダなことをする必要はありませんが、どんなに忙しい仕事でも、大抵なんらかの「隙間」時間はあるはずです。

そういう「隙間」の時間に、「遊び心」をもって自分の「仕事」を振り返り、こんなのはただの「ゲーム」にすぎないんだ、と思えたら、張り詰めた心に、少しの余裕が生まれると思うのです。

スーパーのレジの仕事をしている方などを見ると、本当に「人の時間を1秒たりとも無駄にしない」ために、「必死」で仕事をしていますから、頭が下がります。

けれども、中にはそういう仕事を「余裕で」こなしてる人もいるんですよね。

これは「才能」の問題もあるかもしれませんが、どちらかと言えば「気持ち」の問題だと思います。

「必死で」こなしてらっしゃるみなさんには本当に申し訳ないのですが、「余裕で」こなしてる方に当たった方が、お客の立場としては気が楽です。

「結果」優先で考えるとどうしても、「ムダにするな」というような話になりがちです。

でも、人生で大切なのは「結果」だけじゃないですよね。

「過程」も大切ですし、その「過程」を楽しむことができれば、結局それが「結果」につながってくるのではないでしょうか。

だから、「あなたの時間を1秒たりともムダにしない」ように頑張るより、

「あなたとこうしてやりとりをする時間がたとえ1秒であっても、それを大切にして、意味のある、楽しめる時間にする」

ことを心がけたほうがいいんじゃないかなって思うんです。

そうすれば、「仕事」の時間も楽しくなり、相手に気持ちが伝われば「結果」にもつながり、いいことづくめじゃないですか。

「頑張りすぎ」はどうしても「消耗」します。

どこかのブロガーさんではないですが、「消耗」する生活はおすすめできません。

高木正勝さんは、まさにそうやって、「自分が楽しむ」ことで、「周りの人も楽しめる」空間を作り、それを「仕事」にしている天才的な人だと思います。

塩谷舞さんは、その高木さんの「秘密」に気づき、「純粋欲求」にしたがって「自分が楽しむ」ことを、どうやって「仕事」につなげればよいのかを模索なさっているようです。

えっ、ぼくはどうなのかって?

今のところぼくは、緊張しいしい文章を綴っている修行中の身ですが、こうやって塩谷さんの素敵なインタビュー記事を通して、高木正勝さんの生き方を知ることによって、

「そうだ、まずは自分が楽しまなくっちゃ。それが読者のみなさんに伝われば、きっと『結果』にもつながるはずだ」

と思いも新たにしているところなのです。

というわけで、今日も長い記事を最後まで、どうもありがとうございました。

それでは、みなさん、ナマステジーっ♬


☆今回、題材にさせていただいた記事はこちらです。
日本に、この人がいて、本当に良かった。 | milieu(ミリュー)

☆塩谷さんについて知りたい方には、こちらの記事もおもしろいと思います。
塩谷舞(しおたん)って誰?世界の小室哲哉とクロレッツでコラボという冗談をホントにした話