好きな音楽を聴くだけでいつでも「鳥肌が立つ」あなたは、100人中 4 人の 幸せ者かも?
みなさんは音楽を聴いて、鳥肌が立ったり、ぞくぞくしたり、涙が流れたりした経験はありますか。
こうした音楽を聴くことで、感情が刺激されて、体にまで反応が現れることは、多くの人が体験することですが、人によってずいぶん感受性に違いがあるようです。
アメリカで 2016 年 3 月に発表された研究によると、この感受性の違いは、
脳内の音を処理する部分から
感情や報酬を処理する部分への
神経線維のつながりの「太さ」
によって決まってくるのだといいます。
それでは、もう少し詳しく、この研究の内容をみてみましょう。
- 研究の対象者は、こうして決められました
- そして、実際の実験はこんな感じです。
- 音楽によって「鳥肌が立つ」人は、音の知覚部から感情・報酬部への神経接続が「太い」
- 好きな曲を聴くだけでいつでも「鳥肌が立つ」人はどのくらいいるの?
- 音楽サイト fnmnl.tv の「音楽を聴いて鳥肌が立つのは特殊な脳の構造を持つ人だけ」という誤報について
研究の対象者は、こうして決められました
この研究では、まず 237人の対象者について、心理特性や音楽に対する好みや反応などをオンラインで調査しました。
そして、この調査のうち、音楽を聴くと「鳥肌が立つ」特性を示す 7 点満点のポイントが、
- 6 - 7 点の人物 10 人を「鳥肌」の対象者として、
- 1 - 2 点の人物 10 人を「非鳥肌」の対象者として、
選び、実際の研究を行なったのです。
なお、実際には「鳥肌」の対象者はもう 5 人選ばれましたが、実験中に「鳥肌」体験を報告できなかったため、解析データには含めなかったということです。
そして、実際の実験はこんな感じです。
実験では、「鳥肌」の人にも「非鳥肌」の人にも、自分の「好きな曲」と、特に好きではない「中立の曲」を聴いてもらいました。
そして、曲を聴いている間に、リアルタイムで自分の感覚を報告してもらいます。
報告する感覚の内容は、「毛が逆立つ」「胸がどきどきする」といった体に感じる具体的な感覚から、「時間の感覚がなくなる」「没頭する」といった抽象的なものまで、15 の項目です。
同時に被験者の心拍の速さと皮膚伝導度も測ります。
また、MRI スキャナーによって被験者の脳をスキャンします。
以上によって実験のデータが得られました。
結果はどうでしょうか?
音楽によって「鳥肌が立つ」人は、音の知覚部から感情・報酬部への神経接続が「太い」
「鳥肌」の人は、好きな曲を聴いているときには、皮膚伝導度も心拍数も高くなり、その高まりは、本人の「鳥肌感」の報告と一致しました。
「非鳥肌」の人は、好きな曲を聴いているとき、皮膚伝導度はある程度高まるのに、心拍数は高まりませんでした。そして「鳥肌感」の報告は、ほとんどないか、まったくありませんでした。
そして、音楽の練習をした年数が長い人ほど、「鳥肌」を感じる割合が高くなる傾向が見られました。
また、MRI スキャンによる脳の解析では、
音を処理する部位である上側頭回後部から、
感情と報酬を処理する部位である前部島皮質と前頭前皮質内側部への
神経線維の接続の「太さ」を示す灰白質の容積が、「鳥肌」グループのほうが大きいことが確かめられました。
このとき、灰白質の容積が大きいほど、「鳥肌」を感じやすい傾向も確かめられました。
音楽を長く練習した人ほど「鳥肌」を感じやすいことと合わせて考えると、音楽を練習することで灰白質が増加して「鳥肌」を感じやすくなる可能性もありますね。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
☆ここでちょっと一休み、<スポンサード・リンク>です。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
好きな曲を聴くだけでいつでも「鳥肌が立つ」人はどのくらいいるの?
残念ながら、この実験では「鳥肌」の人が何%、「非鳥肌」の人が何%という具体的な数字は出てません。
けれども、調査対象の 237 人のうち、少なくとも 10 人ずつの「鳥肌」の人と「非鳥肌」の人がいたわけですから、
10 ÷ 237 × 100 ≒ 4 %
程度は、好きな曲を聴くだけで「鳥肌」を感じる人と、好きな曲を聴いてもほとんど「鳥肌」が感じられない人がいることが分かります。
実際には、実験の対象にならなかった人の中にも、「いつも鳥肌」な人がいる可能性がありますから、もう少し割合は高まるかもしれませんね。
音楽サイト fnmnl.tv の「音楽を聴いて鳥肌が立つのは特殊な脳の構造を持つ人だけ」という誤報について
・音楽を聴いて鳥肌が立つのは特殊な脳の構造を持つ人だけが経験できるという研究結果 - FNMNL (フェノメナル)
という記事を見て、「へー、そうなの!」と思った方もいらっしゃったかもしれませんが、以上説明してきたとおり、実際の研究の内容は、ちょっと違った話になっています。
すでに説明したとおり、「鳥肌」を感じやすい人ほど、
- 脳内の音を処理する部分から感情と報酬を処理する部分への神経接続が太い
というのが、この研究の結論です。
また、
現在のところ人口の何パーセントがこのような高密度の神経繊維を持っているかは明らかになっていない。
というふうに書いてあって、確かにそれはそうなのですが、少なくとも 4 % 程度いることはこの研究からも読み取れることです。
もう一点、「特殊な脳の構造を持つ人だけ」というタイトルから、
- 「音楽鳥肌」は先天的なもの
という誤解をした人もいるようですが、もとの研究は「先天的」とは述べていません。
むしろ、音楽の経験を積むと、「音楽鳥肌」の能力が発達する可能性が読み取れることも、すでに書いた通りです。
どうしてこうなってしまったかというと、fnmnl.tv が元記事として使ったのはこちらの記事ですなんですね。
・If Music Gives You Goosebumps, There's Something Special About Your Brain
「音楽で鳥肌が立つなら、きみの脳はちょっと特別だよ」
みたいなタイトルです。
そして、こちらの記事に
At this stage, it’s also unclear what percentage of the population has these denser neural circuitries.
とあって、先ほどの引用と対応します。
というわけで、このアメリカの音楽サイトの記事が、研究報告を「誤読」したことが元になって、日本へも「誤報」が伝わってしまったというお話でした。
ちゃんちゃん。
というところで、この記事はおしまいです。
それではみなさん、ナマステジーっ♬