[2019.05.16 更新]
みなさん、こんにちわ。

GIGAZINE のこちらの記事、
「瞑想」で生じるデメリット「魔境」について科学的な調査が始まる - GIGAZINE
タイトルはやや大げさですが、瞑想のデメリットの一つとしても考えられる魔境についての研究を紹介しています。

この記事では瞑想と魔境について、ぼくの経験もまじえて書いてみます。

瞑想であなたも魔境に入れるのか

「魔境」というのは禅の用語で、いわゆる「幻覚」や「自我肥大的妄想」のたぐいを表すことばなんですが、アメリカでは日本から入った禅が、マインドフルネス・ブームの前からかなり普及して実践されているもんで、そのまま「makyo」という言葉が使われてるというのが、面白いですね。
(wikipedia にもちゃんと乗ってます。・Makyo - Wikipedia)

GIGAZINE で紹介されている研究は、「魔境」とは言っても、瞑想にともなう様々な「不快な副作用」についての心理学的調査で、60人の西洋の瞑想実践者に聞き取り調査をして、「魔境」の特徴を調べたものです。

60人の中には初心者も含まれているものの、ほとんどの人が一万時間以上の瞑想をしているベテランとのこと。毎日二時間やっていたとしても、13年以上以上の経験があることになりますから、初心者で「魔境」を経験する人は少ないのかもしれません。

そういえば、映画作家の森達也氏が、自分の体験として、しばらく座禅会に通っているうちに、「視界がぐにゃりと歪んだ」ということを書いており、そのことをお坊さんに相談すると、「きみは座禅が向いてないようだからやめたほうがいい」と言われたそうです。
(この話は、オウムに関するドキュメンタリー映画「A」の続編「A2」の撮影日誌に出ていた話のはずです。記憶がおぼろなので、もし違ってたらごめんなさい)

このように、瞑想の初心者でも「敏感」な人は、「魔境」に落ちいる可能性はありますので、ご注意ください。

深い瞑想に「魔境」はつきもの

さて、件の研究では、60人の瞑想者から、59種類の「魔境」が確認されたとのことで、それを

「認知的」「知覚的」「感情的」「身体的」「意識的(モティベーションに関わるもの)」「自覚的」「社会的」

の七種に分類したそうです。

報告された「魔境=不快な感覚」には、

「不安」「恐怖」「意図しない痙攣」「不眠」「感情が自分のものとして感じられない」「光と音に対する過敏症」「時空のゆがみ」「吐き気」「幻覚」「いらつき」「過去のトラウマの再体験」
*1

などが含まれ、比較的、症状の軽度な「一時的」なものから、効果が継続する「持続的」な重度なものまであったとのことです。

一日10分くらいまでの軽い瞑想では、こうした「魔境」経験はあまり起こらないでしょうが、毎日一時間もする人ならば、多くの人がなんらかのこうした経験をお持ちなのではないでしょうか。

ぼくも十日間合宿の瞑想コースでは、「これが永遠というものかー」とか思ったことがあります。

また、もともと緊張しやすいタイプだったのですが、瞑想をすることで体に対する感覚が敏感になったことが合わさり、このところ始終「腰の緊張」を意識せざるを得ないはめになり、結構精神的にきつい状態になっています。これを受け止めてきちんと瞑想を自分のものにしようと目下健闘中です。
(現在は落ち着いています。2019.5.16記)

瞑想には、心の中のもつれを解いてくれる効果がありますが、心の底に沈殿していた「問題」が浮上してくることにより、このような一時的な「悪化」も起こります。

このとき周りからの支えがないと、一人で乗り切るのはきつい場合もありますので、一人で深い瞑想を試みる場合は、その辺りのことをしっかり覚悟しておくことが必要です。

そして、魔境のその先

GIGAZINEの記事で紹介された研究は、聞き取り調査による体験者の経験にもとづいて「魔境」の経験を調べたものですが、LSD・マリファナ・シロシビンなどの幻覚剤を使った脳神経科学的な研究も欧米では盛んです。

LSDのような強い幻覚剤ではバッドトリップと呼ばれる「魔境」体験がつきもの。ぼくも法律で規制がかかる前の2000年頃にはマジックマッシュルームという幻覚作用を持つきのこを摂って恐ろしい「妖怪」世界を経験しました。

このような幻覚作用を持つ向精神性物質による変性意識と、瞑想による変性意識との比較研究も今後ますます盛んになっていくと思われます。

仏教的な瞑想では、こうした「魔境」をただ心が創りだした「幻」であるとして、それを何か重要なことであると見ることをせず、また異常なものとして恐れて追い払うこともしない、「いつでも平常心」であることを理想とします。

2,500年前にお釈迦さまが考案した瞑想法が形を変え、マインドフルネスと名前を変えてビジネス界でももてはやされる今日このごろですが、科学的な技術の進歩によって、

  • 「ようやく西洋の先端が、東洋の叡智に追いついてきた」

といってもいいのではないでしょうか。

というところで、今日は、ゴエンカさん方式ヴィパッサナー瞑想を練習中のわたくしが、瞑想と魔境について大風呂敷を広げさせていただきました。

どうやら、おあとがよろしいようで。
それでは、みなさん、ナマステジーっ♬

☆こちらの記事もよろしければ、どうぞ。(別サイトの記事です)

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魂の次元: 不思議なきのこを科学する - そして瞑想と悟りへ

*1:この部分GIGAZINEの訳が原文と少し違うので訳し直しています。原文: feelings of anxiety and fear, involuntary twitching, insomnia, a sense of complete detachment from one’s emotions, hypersensitivity to light or sound, distortion in time and space, nausea, hallucinations, irritability, and the re-experiencing of past traumas