「おれって発達障害?」と思ったときに考えてほしいこと - 発達障害は「病気」なのか
lifehacker の記事、
・【書評】『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』 | ライフハッカー[日本版]
で、精神科医であり、発達障害でもあるという西脇俊二さんが、ご自分が障害を克服した経験をまじえ、発達障害とどう付き合ったらよいかを述べた本、
『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』
が紹介されています。
今日は、西脇さんの説く発達障害との付き合い方を簡単に説明するとともに、「自分は発達障害かも?」と考えているあなたに、ちょっとしたヒントをお伝えできたらと思います。
- 精神科医にはなったけど、中学時代から30代まで20年も人間関係で悩み続けた西脇さん
- 「自分は発達障害かも?」と思っているあなたへ - 悩みが深刻ならお医者にかかってみるという手もあります
- 最後に「発達障害」は病気なのか?と考えてみる
精神科医にはなったけど、中学時代から30代まで20年も人間関係で悩み続けた西脇さん
西脇さんは、中学時代から30代まで20年も人間関係で悩み続け、「医学以外の分野」でその答えを探し続けましたが、結局その答えが見つかったのは自分の専門分野である「精神医学」の中だった、と言います。
自分が発達障害であり、アスペルガー症候群(AS)とADHD(注意欠如・多動症、注意欠陥・多動性障害とも)の二つの要素を合わせもっているのだと気づいたとき、発達障害に特有の行動パターンを意識的に変えていくことで、対人トラブルを減らすことに成功したというのです。
アスペルガー症候群は生まれつきのものであるとされ、有効な治療法は確立されていないため、現在の治療の基本は、問診が中心で、その人に応じたさまざまな指導が行なわれるといいます。
たとえばアスペルガーの人は、段取りが悪かったり、時間管理が苦手だったりする場合があります。
そういう人は、TO DO リストを作ってスケジュール管理をすることで「苦手」を減らせます。
具体的には、
1. まず一日のタイムスケジュールを書き出して行動の流れを把握する。
2. さらに週間・月間の予定表を作って、今週やること、今月やることを確認しておく。
3. 毎朝、朝の十五分を利用して「今日やること」のリストを作るようにします。仕事なら、ミーティング、レポート提出、会議資料のコピー、商品サンプル確認、メールチェックなど、やることを(五~七点までと数を決めて)書き出します。
4. 今日やることリストに、「A」「B」「C」の優先順位をつけていきます。
「A」絶対に今日やること
「B」なるべく今日やること
「C」明日でも大丈夫なこと
5. 「A」が複数あるときは「A1」「A2」「A3」としてさらに優先順位を決める。
このように毎日するべきことを朝の15分でまとめることで、段取りよく行動できるようになるのだと言います。
また、発達障害であることは、必ずしも悪いことばかりではありません。
アスペルガーの人は、特定の物事への興味やこだわりが強く、集中力も高い場合があります。
こうした特徴を持つ人は、こだわりや集中力を活かして専門性の高い分野の仕事に向いている可能性があります。
発達障害のために起こっている「苦手」に対処する方法を身につけると同時に、自分の「得意」な分野を活かすような職業につくことで、あなたの「生きにくさ」を改善できる可能性が出てくるわけです。
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「自分は発達障害かも?」と思っているあなたへ - 悩みが深刻ならお医者にかかってみるという手もあります
ぼくは医者で診断を受けたことはありませんが、自己診断では「発達障害系」の人間だなと考えています。
人間関係は苦手で、人前では始終緊張してしまうので、長時間の労働はかなりしんどいのです。
けれども、できる限り仕事をしないですむような人生を送っているので、問題を大きくこじらせることなく、なんとか生きています。
ですから自分を「発達障害系」の人間として認識はしていますが、それはまあ「個性」の範囲であり、「病気」としては捉えていないのです。
あなたが自分を「発達障害かも?」と思っていて、実際に毎日しんどい思いをしているのでしたら、勇気を出して心療内科の門を叩いてもいいかもしれません。
お医者を含め、よい医療従事者に巡りあえ、あなたの悩みをきちんと受け止めてもらうことができたら、それだけでも「しんどい思い」がいくらかは軽くなるはずです。
とはいえ、必ずしもよいお医者ばかりではないことも、あらかじめ知っておいたほうがよいでしょう。
まず第一に日本の医者は薬を出しすぎます。
薬についてよく調べ、医者が出したものでも、鵜呑みにして服用せず、どんな薬かきちんとネットで調べてみること。
そして、飲みたくなかったら飲まず、そのことを素直に伝えても大丈夫な医者かどうか確認する。
このくらいの注意深さで、お医者のよしあしを確認すれば、受診することのデメリットはかなり防げるでしょう。
また、発達障害についてそもそもよく知らない医者も多いですし、よく知っているはずの西脇さんでも、上で紹介した対処法を見ると行動療法的なものが中心になっています。
行動療法が効かないというわけではないですが、発達障害の根本には「慢性の緊張」という問題があり、これを解いていくアプローチができる医者は日本にいないのではないでしょうか。
ぼくは医学の専門家ではありませんが、ネットや本で調べたことを自分の体の反応として確かめてきた経験から言って、
- ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)で説明される腹側迷走神経の社会交流システムの役割や、
- フェルデンクライス・メソッドの体の動きを通して心の緊張を解いていく
といった新しい方法論を検討することが、発達障害の問題を考えるためには必須のものと思うのです。
というわけで「医者に多くは期待できない」という話になってしまいましたが、それはぼくの個人的な考えにすぎませんから、どうかみなさんは、必要だと思えばお医者にかかってみてください。
最後に「発達障害」は病気なのか?と考えてみる
「発達障害」で悩んでいる方はお医者にかかってみるのも一つの手ですから、その意味では「発達障害」は病気と言えます。
一方、医者にかかれば「発達障害」と診断されるだろう方でも、社会で超人的な活躍をしてらっしゃる方もいます。
黒柳徹子さんなど、代表的な例でしょう。
「何が病気で何が病気でないか」は結局は社会との関係で決まってくる相対的な問題です。
あなたが社会との間で「問題」を抱えてしまっているのは、あなたの「発達障害」のためだとも言えるけれど、「社会の許容度の低さ」のためだとも言えます。
この「問題」を解決しようとするとき、「社会の許容度の低さ」を変えるのは難しいから、
- あなたの「行動パターン」を変えよう、
というのが行動主義的アプローチです。
前項の最後では「慢性の緊張」を解くためのアプローチに触れましたが、もう一つのアプローチが「問題」という見方自体を変えてしまう、
- マインドフルネス認知療法 (MBCT, Mindfulness-based Cognitive Therapy)
というものです。
ここではマインドフルネスという言葉を使うことにしましょう。
マインドフルネスは、
「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」
を意味します。
「評価をしない」のですから、最終的には、自分の体験していることを「問題」と捉えることもやめることになります。
このような瞑想的状態を練習することで、認知の枠組みを切り替えることができるようになれば、少なくとも「問題」が軽減されることが十分期待できます。*1
と、いかにも「病気」を治療しているかのような話になってますが、マインドフルネスっていうのは、もともと仏教でサティと呼ばれる「正しい気づき」を意味する言葉なんですね。
日本では中国経由で入ってきたため「正念」と呼ばれますが、これがマインドフルネスのことなんです。
仏教は特別に病気の治療法というわけではありません。
仏教の教えにしたがって瞑想の練習をして結果として病気が治る、ということはありますけど。
なんであれ「生きにくさ」を感じている人が、その「生きにくさ」を解消するためには、仏教的なアプローチが効果的ですよ、という話でして。
もちろん相性の問題はあるので、だれでもかれでもこれで救われます、とかいう話ではないのですけれども。
というわけで、「障害かどうか、病気かどうか」という話ではないところで、「生きにくさ」を感じてる人は少しばかり瞑想について調べてみてもいいかもしれません。
ぼくのおすすめ本はこちらです。初期仏教の瞑想法ヴィパッサナーの考え方がひと通り分かります。アマゾンでご覧ください。
☆ウィリアム・ハート「ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門―豊かな人生の技法」(1999 春秋社)
てなわけで、最後までご精読ありがとうございました。
ではではみなさん、ナマステジーっ♬
*1:たとえば、早稲田大学の研究者による『マインドフルネストレーニングは、不注意得点において、不注意優勢型および混合型の児童に対して改善効果が示唆された。また、多動衝動得点において、不注意優勢型の児童に対して改善効果が示唆された一方、混合型の児童に対しては、改善効果が示されなかった』という報告があります。http://www.coder.or.jp/hdr/27/HDRVol27.07.pdf