マインドフルネスもヴィパッサナーもこれだけ分かれば上等です - 簡単すぎる仏教と瞑想の話
どうしてマインドフルネスの練習をすると人生が楽しくなって、仕事もできるようになるのか、今日は超絶簡単に説明してみます。
- 好き嫌いをなくせば、人生は楽勝モードになります。
- なぜ「好き嫌い」をなくすと、「悩み」もなくなるのか。
- 「好き嫌い」をなくすなんてできるの?
- 「好き嫌い」をなくしたら、人生味気なくなりそうなんだけど……。
- はじめは3回の深呼吸だけでオーケー。マインドフルネスの練習の基礎の基礎。
- 仏教と瞑想・ヴィパッサナー・マインドフルネスの関係。
- 最後にひとつだけ注意点を。魔境に入り込まないために。
好き嫌いをなくせば、人生は楽勝モードになります。
マインドフルネスという方法論は、
- 「今自分に起こっていることを、価値判断せずにただ観察すると、悩みはやがて消え去っていく」
という、あまりに簡単すぎて
- 「いきなり信じろと言われても困っちゃうなー」
的な人間心理の原則にもとづいています。
「価値判断をしない」ということを言い換えてやると、
- 「好き嫌いをしない」
ということになります。
というわけで、マインドフルネスの練習をすると、
- 「好き嫌いがなくなって、すると悩みもなくなり、つまりは人生楽勝モードになっちゃう」
という話なんですね。
「悩み」がなくなっちゃうんですから、仕事も人生も、それまでより充実するのも当然です。
とはいえ、いくらなんでも話が簡単すぎて、「そうは言われてもなー」と思われる方も多いでしょうから、もう少し説明を続けましょう。
なぜ「好き嫌い」をなくすと、「悩み」もなくなるのか。
「悩み」というのは、「いやなことが起きてしまったけど、どうしたらいいだろう」とか、「いやなことが起こるかもしれない、どうしよう」とかいったように「いやなこと」によって引き起こされます。
ですから「いやなこと」をなくしてしまえば、「悩み」もなくなります。
つまり「いやなこと=嫌い」をなくせばいいわけです。
ではどうして「好き」もなくしたほうがいいのでしょうか。
それは「好き」があると、その
- 「好きなことが得られないことが『悩みの種』になる」
からです。
結局「好き嫌い」をなくせば「悩み」もなくなることになります。
「好き嫌い」をなくすなんてできるの?
「好き嫌い」をなくせば「悩み」がなくなるのは、分かっていただけたとして、果たして「好き嫌い」をなくすなんてできるのでしょうか。
これは確かに簡単なことではありません。
ぼくたちは生まれてからずーっと長い時間をかけて、無自覚に「好き嫌い」を作り続けてきてしまったのですから、それを
- 「『好き嫌い』は今日からやめた」
といって、簡単にやめられるものではありません。
けれども、もしあなたに「やる気」さえあれば、「好き嫌い」を少しずつなくしていくことは可能です。
そしてその基本原理は
- 「今自分に起こっていることを『価値判断せずに観察する』」
という、ただこれだけのことなんです。
どうしてこれだけで「好き嫌い」がなくせるかというと、そもそも
- あなたは自分が何を好きで何を嫌いか、「本当は何も分かってない」
からなんです。
「そんなアホな」と思うでしょうか。
もちろんあなたは「自分はこれが好きで、これは嫌いだ」と説明することはできるでしょう。
けれどもそれはあなたの「理性」が言葉で説明していることに過ぎず、氷山の一角にすぎません。
あなたが「本当のところ何を欲していて、何を避けようとしているのか」は、実のところ、「自分の体に起こる反応」を細かく見ていかないと分からないのです。
これは心理学的な実験によって確かめられていることですが、人間が自分の気持ちを知ることができるのは、まず自分の体に反応が起こるからなんですね。
体の反応を無意識のうちに察知して、それによって人間は
- 自分は今怒ってる、とか
- 自分は今悲しい、とか
感じるようにできているんです。
ですから、「今自分に何が起こっているか」を丁寧に観察する練習をすることで、自分の「好き嫌い」を体の反応のレベルで知ることができるようになったときに初めて、あなたは自分の「好き嫌い」を手放し、同時に「悩み」も手放すことができるようになるのです。
ちょっと話が難しくなってきたでしょうか。
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「好き嫌い」をなくしたら、人生味気なくなりそうなんだけど……。
実際に「好き嫌い」をなくしていくのは、ちょっと大変なことが分かったところで、
- どうしてわざわざそんなことをするのか、
という話をここで考えてみましょう。
「好き嫌い」をなくしたら、なんだか人生が味気なくなりそうな気がするかもしれません。
でも全然そんなことはありません。
どかーんと喜んで、どかーんと落ち込むのが好きな方は、もちろんそうして悪い理由はないのですが、「好き嫌い」をなくしていくと、「よい経験」も「悪い経験」も落ち着いて味わうことができるようになります。
すると、ほんの小さな「よいこと」にも喜びを感じることができるようになりますし、大きな「悪いこと」があっても落ち着いて対処して、そこから学ぶことができるようになります。
ですから、あなたが人生というものを、深く充実したものにしたいのなら、マインドフルネスの練習を少しずつでも続けていくことは、
- 「必ずよい結果を生む」
と言っても言い過ぎではないのです。
はじめは3回の深呼吸だけでオーケー。マインドフルネスの練習の基礎の基礎。
マインドフルネスの練習といっても、いろいろなやり方があるのですが、ここではまず、
- 朝起きたときと、夜寝る前に、寝床の中で三回、ゆっくりながーく深呼吸をすること
をおすすめします。
また、朝晩だけでなく、日中の時間がちょっと開いたときに、意識して深呼吸をするのもいいですね。
鼻が詰まっていて、どうしても鼻で呼吸ができない、という方以外は、
- 鼻から吸って、鼻から吐く
のが基本ですが、好みによって吐く方は、口から細くゆっくり吐いてもいいでしょう。
時間を取れる方は、5分くらい呼吸を意識し続けると更にいいですね。
姿勢は寝っ転がったままでもいいですし、座禅の形でももちろんよし、椅子に腰をかけてもかまいません。自分の楽な姿勢でやってみてください。
慣れてきたら、30分から1時間くらい座ってみてもいいでしょう。
長く練習を続ける場合は、意識を呼吸に向けて、鼻を通る空気の感覚や、お腹が膨らんでしぼむ様子を観察します。体の表面にどんな感覚が起こっているかを頭のてっぺんから足のつま先まで、順番に見ていくのもいいでしょう。
そして意識がさまよい出したのに気づいたら、呼吸に意識をもどしてやります。
意識がさまよい出すのは当たり前のことですから、それを「失敗」と考える必要はありません。
「また、さまよい出してるなー」とだけ思って、呼吸に意識を戻す。これを淡々と繰り返すだけです。
この練習を続けるだけで、だんだん自分の体の反応が見えてきます。自分の体の反応が見えてくれば、自分の「好き嫌い」が分かるようになります。
「好き嫌い」が分かれば、「好き嫌い」を手放すことができるようになり、「悩み」も手放せるようになるのです。
仏教と瞑想・ヴィパッサナー・マインドフルネスの関係。
今まではマインドフルネスという言葉を使ってきましたが、瞑想といっても、ヴィパッサナーといっても、ほぼ同じことになります。
マインドフルネスは「気づき」という意味で、日本の仏教では「念」と呼ばれています。
この「気づき」の力を養うための瞑想法がヴィパッサナーと呼ばれ、「正しく見る」という意味です。
初期仏教の基本的な考え方は、
- 無常、この世の中のすべてのものは変化することを避けられない、変化するものに執着しても仕方がない、
- 無我、ふだん私たちが「自分」だと思っているのは、ただそう思い込んでいるだけのものにすぎない、これは自分のもの・これが自分のプライドと思い込んでそれに執着しても、何もいいことはない、
- 苦、この世界のすべてのものは、無常で無我なのに、それに執着することで「悩み」が生まれ「苦しみ」が生まれる、「好き嫌い」をやめ、執着をやめれば、「悩み」も「苦しみ」もなくなる、
ということにあります。
そして、この「悩み」をなくすための具体的な方法が、ヴィパッサナー瞑想であり、マインドフルネスの練習なのです。
仏教の基本の教えは、「戒(かい)・定(じょう)・慧(え)」といって、瞑想はこのうち「定」のことです。心を正しく「定める」という意味です。
「戒」は言動と思考において、悪いことをせず、よいことだけをするという戒めのこと、「慧」は、「戒・定」を守るうちに育まれていく「世界を正しく見る智慧」のことになります。
この3つの柱がお互いを支えあって、「好き嫌い」のない「悩み」から離れた楽勝モードの人生が訪れることになるのです。
こうした考え方が背景にあることを、頭の片隅にでも置いておくと、マインドフルネスの練習も順調にいくはずですよ。
最後にひとつだけ注意点を。魔境に入り込まないために。
マインドフルネスの練習は一人でもできるのですが、ごく一部の人の場合、自分の「妄想の世界」に入り込んでしまうことがあります。
自分だけが正しく、この世界の他の人のあり方が認められなくなってしまうような「妄想の世界」、「魔境」とも呼ばれる状態です。
極端なケースではありますが、オウム真理教の麻原彰晃氏も「魔境」にはまり込んでしまったわけです。
そうした「精神的」な問題だけではなく、頭痛がしたり、体調が悪くなったりといった「禅病」と呼ばれる現象が起こる場合もあります。
こうした問題は、瞑想の方法が間違っていることから起こるのですが、独学だと正しい方向へ修正するのが難しくなりますので、自分で
- 「なんかおかしいな」
と気づいたら、一旦瞑想をやめてみることをおすすめします。
一旦瞑想を離れて、自分は一人でうまく瞑想ができるのか落ち着いて考え、無理はしないことが大切です。
瞑想は決して万能薬ではありません。副作用もありますし、使い方を間違えれば、事故も起きます。
それは自動車や薬が、いくら便利でも、使い方を間違えれば、大きな事故につながるのと同じことです。
そして瞑想は「心の世界」を扱うものであり、目には見えない領域の技術ですから、十分に注意する必要があるわけです。
ちょっとおどかすような内容を書きましたが、魔境や禅病はごく一部の「入り込みやすい」方に関わる特殊な話ですので、たいていの方はあまり気にする必要はありません。
ごく普通のあなたの場合は、むしろ
- 「どうやって練習を続けるか」
のほうが問題になるでしょう。
ですから
- 「無理なくできるところから」
ということで、
- 「朝晩、三回の深呼吸」
から、ぜひ始めてみてください。
というわけで、今回はマインドフルネスの基礎の基礎でした。
それではみなさん、ナマステジーっ♬
☆なお、初期仏教の基本的な考え方と瞑想の関係について、もう少し知りたい方には、
「ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門―豊かな人生の技法」(ウィリアム・ハート著、1999 春秋社)
をおすすめします。
また、じっくりと瞑想に取り組みたいと思われる場合には、日本ヴィパッサナー協会の十日間の合宿コースをおすすめします。
京都と千葉にセンターがあり、ホームページはこちらになります。
・[日本ヴィパッサナー協会]
(いらすとやさんの画像を加工して利用させて頂いています)