みなさん、alis.to というサイトはご存知ですか。

alis.toでは、記事を書いたり、他の人の記事にいいねをしたりすると、alisというトークンがもらえるのですが、このサイトの発端がちょっとおもしろいんです。

2017年5月の話なんですが、フリーエンジニアの石井壮太さん(30)が、アメリカのソーシャルメディアSteemに南米の旅行記を載せて、米ドル換算 30ドルほどの報酬を仮想通貨で受け取り、その報酬で最高級の宅配ピザを楽しんだっていうんですね。*1

これをアレンジして日本でやったら受けそうだぞ、と。それで、知り合いだったCEOの安昌宏さん(28)とマーケティング担当の水澤貴さん(35)とともにalis.toを作り始めたってわけなんです。

仮想通貨について興味のある人はすでに知ってるかもしれませんが、alis.to を運営する株式会社ALISは、

  • 2017年9月に日本向けのWebサービスの会社としては初めてICOという手法を使い、
  • およそ4.3億円相当の資金をイーサリアム(ETH)という仮想通貨で調達した

ことで話題となりました。

エンジニアの石井さんは、まさにこのICOの立役者です。

この日本の若者三人のチームが、5月に思いついてから、わずか四ヶ月で4.3億を集めたっていうんですから、これはすごい。

この記事ではまず、暗号通貨(≒仮想通貨)という呼び名について説明したあと、alis.to というシステムの成り立ちを通して、暗号通貨の未来について考えてみたいと思います。

仮想通貨ではなく、暗号通貨と呼びましょう。

日本では仮想通貨と呼ばれることも多い暗号通貨ですが、そして日本のお役所はなぜかこれを暗号資産と呼ぶことにしたいらしいのですが、これはやはり暗号通貨と呼ぶのが正しいものでしょう。

「仮想」通貨という呼び名は、「本物の通貨ではない」というニュアンスが感じられますよね。

また、暗号「資産」では、通貨としては使えない「投資の対象」のような感じがします。

けれども暗号通貨は、現実の貨幣の代わりに使える立派な「通貨」であり、それを実現している基礎的な技術が暗号化の技術なのですから、「暗号通貨」という言葉がぴったりと合います。

現時点では交換価値が不安定ですから、日本での実用性はまだまだ低いのですが、インフレの激しい外国などでは十分利用価値があります。

ですからクリプトカレンシーという英語の言い方を直訳した暗号通貨と呼ぶことによって、それが一体なんなのかということが、一番はっきりと分かるのです。

alis.toの運営会社ALISと暗号通貨alis

おもしろいことにalis.toを運営するALISという会社は、香港籍になっています。

株式の公開による資金調達(IPO=Initial Public Offering)ではなく、新規の暗号通貨の公開による資金調達(ICO=Initial Coin Offering)をするために、日本の法規制が未整備であることもあり、このような形を取ったものと思われます。

この記事ではalis.to の運営会社はALISと大文字で書き、ALISが資金調達のために作った新しい暗号通貨のことはalisと小文字で書くことにします。

さて、ALISは2017年7月に設立されたばかりの会社ですが、それから二ヶ月後の9月には当時の価格でおよそ4.3億円相当のICOを成功させました。

暗号通貨alisを新しく発行し、それを既存のイーサリアムETHによって投資者に販売したのです。

これによって 13,000〜14,000 ETH ほどのイーサリアムを資金調達した模様です。

ただし4.3億円というのは当時の1ETH≒32,000円のときの時価であり、その後、一旦は1ETH≒160,000円まで上がったETHの価値は、現在は1ETH≒13,000円まで下げていますので、ALISが調達した資金は現時点のレートで考えると、1.7 〜.8 億円ということになります。

これと同期して、alis の価値も 17年11月に40円だったものが、18年1月に最高値148円を記録したあと下がり続け、現在は4〜5円で取引されている状況です。

運営会社ALISのみなさんも何かと苦労なさっていることでしょう。

投稿したり、「いいね」をするとalisトークンが稼げる - ソーシャルメディアalis.toの仕組み

ソーシャルメディアalis.toについて、ITmedia NEWSはこのように紹介しています。*2

alis.toは、ブロックチェーン技術を使ったメディアプラットフォーム。読者が「良い」と思った記事を評価すると、書き手に独自のコイン「alisトークン」が配布されるほか、良いと認められた記事をいち早く評価した人にもトークンが配られる。

 ネットメディアがページビュー(PV)偏重や広告依存に陥り、フェイクニュースなど質の低い情報がまん延する中、「報酬を通じて信頼できる記事・人を発掘できるソーシャルメディアプラットフォーム」構築を目指すという。

高評価の記事に「トークン」配布 広告に依存しないメディア「ALIS」、ICOで資金調達 - ITmedia NEWS

暗号通貨を使って、簡単に「投げ銭」できるようにすることで、コミュニティの機能を強化し、ネット上の情報の流通を健全なものにしようというわけです。

また、ALISのコアメンバーの中村健太さんは、ALISのICOとビジネスモデルについて

  • 新規株式の代わりにトークンを新規発行
  • これを買ってもらう(トークンセールする)ことで投資家や企業から資本を獲得
  • サービスを拡大しトークンの相対価値を上げていくことで、投資元へのバックを行い、かつそれを自ら放出することで利益を作り出していく
日本向けブロックチェーンSNS『ALIS』がICOでの資金調達に挑戦!世界が注目するプロジェクトが動き出す | Ledge.ai

と説明しています。

alis.to の利用者は記事を投稿し、それに「いいね」をつけることでalisトークンを獲得することができ、サービスの規模が大きくなることで、トークンの価値も上がり、それによって運営会社の利益を出すというわけです。

このシナリオ通りにいくかどうかはまだ未知数ですが、興味深い試みであることは間違いありません。

なお、ICOで発行したalis はすでに海外の取引所に上場されており、実際に暗号通貨として売買されているのですが、alis.toは今のところクローズドβ版としての試験運用中であり、そこで獲得できるalisトークンはalis.toの外に持ち出すことはできません。

確かにalis.toでalisは稼げるが、今はまだ対価を求める時期ではない。

alis.toというソーシャルメディアを使えば、記事を書き、「いいね」をすることでalisを稼ぐことができます。

ちょっとやってみようかな、とあなたも思うかもしれません。

けれども前に書いた通り、現状ではalis.toで獲得できるalisは換金することができません。

ですから、記事や「いいね」でalisを稼ぐことはできますが、報酬目的でそれをすることは、今のところあまり現実的ではありません。

投資的な意味合いで投稿していくことには意味があると思いますし、将来的にこのシステムがきちんと自立すれば、youtuber のような 稼ぐ alisista も出てくることになるでしょうが、今の時点ではその可能性は未知数です。

ですから、現状では alis.to における投稿は、あくまでも「楽しみとして」ということが基本だと思います。

また試験運用の段階ですが、alis.toにはその可能性に価値を見つけた人たちが集まってユニークな交流が行なわれています。

alis.toという場がその魅力を十分発揮して、発展を続けていけば、最初は趣味としてやっていたことが、いつか実用に「化ける」可能性も高くなるわけです。

実際にalis.toを覗いてみると、「確かに楽しくやってるな」と思うと同時に、内輪だけの「空騒ぎ」になってないかなと、ちょっとだけ気になる部分もあります。

alis.to という場がメディアとして成立し、本当に実用的なものになるためには、本当の意味で「楽しめる」コンテンツ、「役に立つ」コンテンツを提供できる人がどれだけ増えるかが重要であり、そうやって魅力的なコンテンツが増えてきて初めて、それを楽しみにする読者も増えるという良循環が周り出すことになるでしょう。

ですから、今alis.toで書いてみようかとあなたが思うのならば、どれだけ「稼げるか」ではなく、どれだけ自分で「楽しめるか」、どれだけ人を「楽しませることができるのか」を意識することが大切になるのです。

alisが有名になるとき、暗号通貨は空気のような存在になる。

今はまだ、一般の人から怪しいもののようにしか見られていない暗号通貨ですが、遠くない将来にこれは必ず「空気のように普通の存在」になります。

なんでそんなことが言えるのかって?

それは例えば、スマホのことを考えれば明らかですよね。

ほんの数年前にはスマホというものは、一部の好き者が使うものであり、多くの人はガラケーで十分と思っていました。

でも今やスマホはまさに空気のような存在ですよね。

持ってて当たり前、間違えてなくしたら、息が詰まって死にそう、みたいな……。

まあ、それは大げさにしても、ミネラルウォーター並みには普通ですよね。

水道水でも生きていけるけど、飲み水はミネラルウォーターのほうがいいよね、って感じで。

ところで、最初の仮想通貨とか暗号資産とかいう呼び名の話も関係するのですが、実のところ、日本政府は暗号通貨について快く思っていない可能性があります。

快く思っていないから、暗号通貨と素直に呼ばないで、妙な名前を使わせようとしているのではないかと勘ぐれるからです。

とすると、日本での暗号通貨の普及は他の国に比べて遅れる恐れはあるのですが、世界的な流れを考えれば、日本だけが使わないですますわけにもいきません。

そうなればあとは、早いか遅いかの問題となりますから、今こうやって alis.to を使っているみなさんは、時代の最先端を行っていることになります。

知識というものは、実際に使うことで初めてきちんと身につけることができるものですから、暗号通貨というものがどんなものなのかということも、こうやって alis.to というシステム上で現実に使うことで、その特性もよく分かるようになる、というものです。

いつかalis.toが、twitterやfacebookのように誰もが知る存在となるとき、暗号通貨も必ず空気のような存在になっていることでしょう。

というわけで、今日の記事は、

  • 仮想通貨ではなく、暗号通貨と呼ぼう
  • alis.toは、今はまだ「稼ぐ」時期じゃない、使って楽しもう
  • いずれ空気のような存在になる暗号通貨を、今から使ってよく知ろう

というお話でした。

最後までおつき合いいただき、ありがとうございました。
それではみなさん、ナマステジーっ♬

alis.to に2018/11/29初出の記事を加筆・修正しました。
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*1:https://www.businessinsider.jp/post-105173 参照。

*2:ALIS→alis.to 、ALIS→alis のように一部表記を本記事の方針に合わせて変えています