呪術師カスタネダ
「呪術師カスタネダ」リチャード・デ・ミル、マーティン・マクマホン; 高岡よし子、藤沼瑞江訳; 大陸書房1983
カルロス・カスタネダに関心のある人には、ぜひこの本の第二部を読んでほしいと思う。
だいぶ前からこの本のことは知っていたのだけど、大陸書房から出ているので、
ちょっと怪しさ を感じ、放っておいた。
それが、この間フロリンダ・ドナーの「魔女の夢」を読んでみたら面白かったので、こっちも
読んでみることにした。
とてもまともで、しかも面白い本である。
アメリカでは別々に出版されている本をを一冊にまとめたもので、
第一部「呪術師ドン・フアンの世界」は、カスタネダの最初の三冊の
著作を手際よくまとめたもので、人類学専攻の学生向きの参考書だと
いうのもおもしろい。
この部分は、カスタネダをまだ読んだことのないひとが試しに読んで
みるにもいいし、カスタネダをもっと読み込みたい人には便利に使える
だろう。
この本の真骨頂は第二部「カルロス・カスタネダの旅」にある。
カスタネダの著作はとかく、ノンフィクションなのかフィクションなのか、
という視点で論じられやすいが、著者であるデ・ミルは綿密な資料に基づき
カスタネダの著作は事実に基づくフィクションであると断定する。
けれど彼は、一部の学者の先生方のように、だからカスタネダの著作は
でっち上げのうそっぱちで、これっぽっちも価値がない、というのではない。
膨大な資料に基づき、自身の経験を交えて紡ぎ出されたカスタネダの著作を、
C・S・ルイスにも比べられる力を持った小説として評価するのである。
カスタネダへの愛情に満ちた、だかちこそ辛口の批評満載の、評伝かつ評論
であり、カスタネダに関心を持つ人には是非読んでもらいたい本である。
きっと新しい発見があるだろう。
なお、デ・ミルがまな板に載せているのは以下の四冊である。
ちなみにリチャード・デ・ミルは元々心理学をやっていた作家とのことで、
もう一冊カスタネダについて"The Don Juan Papers" という本を出している。
こちらもそのうち読んでみたい。