ホルヘ・ルイス・ボルヘス「砂の本」篠田一士訳、集英社文庫1995


話す言葉が文字によって表されることの不思議さ。


子どもの頃からぼくはそういうものに心を魅かれていたようだ。
そんなこともあって今までにいくつもの外国語をかじってきたが、
世界語エスペラントもそのひとつ。


久しぶりにボルヘスを読んでいたら、『砂の本』に収められている
「会議」という短編にヴォラピュクの名に並んでエスペラントの名が
出てくるのに気づいた。
「会議」は、ウルグアイの農場主が全人類を代表する世界会議を
作ろうとする物語である。その会議の会員が使う言語の検討対象として
ヴォラピュクとエスペラントが挙げられている。
エスペラントについては、アルゼンチンの詩人ルゴーネスが
「公平、単純、経済的」と『感傷的な暦』の中で述べた、とある。


この「会議」もとても面白いし、ラヴクラフトに捧げられている
人智の思い及ばぬこと」もゴシックの香り漂う奇妙な味の恐怖小説であり、
名品と思う。


この世界の向こう側に存在する、不可思議なもう一つの世界を描くという
意味で、こうした作品を読むと、カスタネダr.d.レインとのつながりを
強く感じる。