カート・ヴォネガット「タイムクエイク」朝倉久志訳 (ハヤカワ文庫2003)


ヴォネガットの最後の長編。
63の断章とプロローグ、エピローグからなる、いつものヴォネガット節。
ほかの小説でも狂言回し的に重要な役を演じる売れないsf作家
キルゴア・トラウトが主人公。


読み始めて初めのうちは、ちょっとたるいかしら、と思ったのだが、
だんだん面白くなってきて、19章、20章で紹介されるキルゴア・トラウト
短編「防空壕のビンゴ・パーティ」はトラウトの最高傑作だと思う。
ナチス敗北寸前、ベルリンの地下壕でヒトラーたちがビンゴゲームで遊ぶ、
果たしてヒトラーの最期の言葉は...? みたいなブラックな話です。


それから最後63章でのキルゴア・トラウトの、人間の意識、魂を謳いあげる
演説。ヒューマニストたるヴォネガットの面目躍如、てなとこでしょう。