ナワールの領分
カルロス・カスタネダの書く中米の呪術的世界観では、
人間の認識の領域をトナールとナワールに分けて考える。
トナールは言葉で切り分けられた世界、
ナワールは言葉で切り分けられない世界である。
この世に生れ落ちた瞬間から、わたしたちは外界との接触、
特に周りの人間から言葉をかけられることを通して、
言葉で世界を切り分ける能力を発達させていき、
逆に言葉以前の世界を見る力を失っていく。
ふつう現実と呼ばれるものは呪術師にとっては記述でしかない、
という台詞が出てくるのだが、こういう思考法を続けていると
徐々にそういう見方ができるようになってくるもので、まあ、
こうして書いたものは所詮ことばにすぎないのだけれど、書くことで
ある程度、方向付けができる部分もあるので、とにかくこうして
ぼくはだらだらと書いてみるのだ。
さあ、これを書き終わったら頭を空っぽにしてみよう。
そうして、少しでもナワールの領分に近づいてみよう。
[追記]カスタネダを読んだことのない方には、まずは
「呪師に成る ― イクストランへの旅」をお薦め します。
ドン・フアンものの三作目ですが、十分独立した作品として読めます。