岡本太郎「今日の芸術」
ぼくにとって岡本太郎は大阪万博の太陽の塔であり、あるいは
「グラスの底に顔があったっていいじゃないか」である。
彼の作品がどう評価されているのか知らないし、それほど好みというわけでもない。
けれど、彼の「芸術はバクハツだ!」という言葉の力強さには惹かれる。
「今日の芸術」が世に出たのは1954年、遠い昔の話。
1999年に再刊され、横尾忠則が序文を、赤瀬川原平が解説を書いている。
時代の流れが感じられて面白い。
この本を、1911年生まれで1929年にパリに渡った岡本の、1954年における
文明論として読むと、工業化された今の社会の中でぼくらが楽しく生きていくには
どんなやり方があるのか、そんなことを改めて考えたくなってくる。
芸術の<新しさ>に対する思い入れで書かれているから、新しければいいの? とか、
芸術じゃなくてスポーツでも疎外された自分を取り戻せるよね、とか思ってしまう
部分もあるのだけど、つい冷めた見方ばかりしてしまうぼくとしては、伝わってくる
熱い思い、特に第一章の「なぜ、芸術があるのか」には、なかなか心地よい波動を
感じたのであります。
なお、tade氏のページにこの本からの引用あります。