テッド・チャン「あなたの人生の物語」早川書房2003


テッド・チャンの名前はしばらく前から気になっていたのだけれど
元sfファンの身でしかなく、最近はロクに小説も読まないものだから、
わざわざ読もうとはせず放っておいた。


それが夏に横浜でワールドコンがあった関係で旧友のst氏と会う機会が
あったものだから、テッド・チャンはどうかと聞いてみたところ
「あれはおもしろいよ」と。


というような経緯でようやく読んだわけだが、なかなかおもしろい。
この本に収められた八篇のうち、特におもしろいと思ったのは二つ。


一つは表題作の「あなたの人生の物語」。
異星人との接触を扱ったものだが、世界、特に時間の認識の描き方が
秀逸で、ある意味、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」を思い出させる。


もう一つは「顔の美醜について--ドキュメンタリー」。
こちらは近未来において美的な認識を技術的にコントロールできるように
なったときの社会的な様相を書いたもので、ハインラインの「光あれ」を
思い出した。


各編の出来不出来は感じるし、人それぞれ好みもあるだろうけれど、
全体的に哲学的・科学的な思考実験の楽しさを思い出させてくれて、
楽しく読むことの出来た一冊である。


なお、こちらワールドコンのときのインタビューの映像あり。