カート・ヴォネガット「国のない男」
スターリンの教会破壊や現在の中国での教会破壊についてだが、
この種類の宗教弾圧はカール・マルクスの次の言葉が原因に
なっているらしい。
つまり「宗教は民衆のアヘンである」というやつ。
マルクスがこう書いたのは1844年、アヘンおよびアヘン誘導体が
だれもが手に入れることのできる唯一の効果的な鎮静剤だった頃の
ことだ。マルクス自身もアヘンを使用していて、その場限りで
あっても苦痛をやわらげてくれるアヘンに感謝していたという。
マルクスは客観的な事実を述べているのであって、
宗教がいいとか悪いとかいう話をしているのではない。
宗教は、経済的、あるいは社会的な困難に対する鎮痛剤になりうる
ということだ。
つまり、宗教を否定しているわけではない。
---カート・ヴォネガット「国のない男」(金原瑞人訳、nhk出版 2007、p.24) より