10. 左側の動き
いよいよ、フェルデンクライス入門編の最終回である。
今までの項では体の右側だけを動かしてきたわけだが、この項では同じ動きを体の
左側で繰り返し、さらに両側を合わせた動きを練習する。したがって文章の量は
今までより少ないが、体を動かすのに要する時間は、今までが半分弱で、この項が
半分強ということになるので、ご注意を。
なお、この一連の練習に要する時間として、フェルデンクライス自身が目安として
あげているのは、慣れないうちは45分くらい、慣れてくれば20分くらいという数字
だが、人それぞれのペースによって変わってくるものなので、自分なりに気持ち
よくできるよう工夫してほしい。
それでは引用を([]内は、那賀乃の注釈)。
○左側の動き
今までこのレッスンでくわしくのべたすべての動きを、からだの左側でくり
かえす。
[参照 「あお向け・右腕の動き」「うつ伏せ・右腕の動き」「あお向け・右腕と右脚の動き」
「うつ伏せ・右腕と右脚の動き、そしてうつ伏せと仰向けで右腕・右脚・頭を同時に動かす」]
○対角線の動き
からだの左側を使った動きが終わったら、右腕と左脚を一緒に、できるだけ
ゆっくり持ち上げ、この動きを25回[はじめは10回ほどでよい]くりかえす。脊椎骨と
肋骨の相互の位置関係の変化を観察し、からだの床につく部分が、片側の腕と脚を
一緒に上げたあとに確認した部分とは全くちがっていることをよくつかもう。
少し休息したあと、左腕と右脚を一緒に25回[上と同じ]持ち上げ、終わったら
休息する。つぎに、両腕と両脚を頭と一緒に、吐く息に合わせて持ち上げる。この
動きも25回[上と同じ]くりかえす。休息をとったあと、頭は床につけたまま、両腕
両脚だけを持ち上げる。
最後にあお向けになり、このレッスンの一番はじめにしたように、かかとから
頭まで、床に接触しているあらゆる部分を観察しよう。生じた変化を、とくに背骨に
そってよくつかむこと。
さて、ここまでの練習を実際にやってくれた方には、はっきりと分ることと思うが、
単純な動作の繰り返しを、その動きにしっかり注意を向けながら十分な回数行う
ことで、確かに体のあり方が変わってくるのである。ふだん無意識のうちに緊張して
体に不要な力が入り、あるいは長年の癖で体が縮こまったり固くなったりして
しまっている、そういった状態が我々の間に見られるごく普通の姿なのだが、その
不必要な力が抜け、縮こまっていた体がすっと伸びて足取りも軽くなる。これが
私がフェルデンクライスをやってみての実際の感想である。
ただし、一人でやっているとなかなかそこまでは行けないのも事実で、この練習法に
興味を持たれた方は、一度実際にレッスンを受けてみるのもよいだろう(たとえば
こちらのページ参照。一回二時間3000円なのでそんなに高くはないですね)。私自身は
正規のレッスンを受けたことはないが、知り合いが芝居の稽古に取り入れており、
そこで何人かの仲間とともに動きの指示を受けながらやってみると、これがなかなか
感じがよいのである。
また、それほどしっかりやらなくても、それ相応の効果はある。私の場合、寝床の
中で、手はお腹の横に普通において寝て、肩だけ持ち上げたり、膝だけ持ち上げたり、
適当にアレンジしてやっているが、それでも十分なリラックス効果を感じる。気が
向いたときに自分のやりたいようにアレンジしてやってみるだけでも、続けていく
うちにあなたの体に対する意識は確実に変わってくるだろう。
今回取り上げた部分はネタ本のうち、ほんの10ページほどにすぎないが、たった
これだけの中にも様々なヒントが詰まっている。それを生かすも殺すも結局は
あなた次第である。
というわけで、このページが少しでもあなたの役に立ちますように、そして
あなたの毎日が少しでも楽しいものになりますように!