08. 不必要な努力はからだを短縮させる
前項では、あお向けになって、右腕と右脚を動かし、腰椎の動きと背骨の伸びる感じに
注意してみた。この項では背骨の縮みと筋肉の余分な緊張の関係について解説する。
不必要な努力はからだを短縮させる
ほとんどあらゆる場合に、筋肉に残る余分の緊張は、背骨を短縮させる原因となる。
動作につきまとう不必要な努力は、からだを縮小させることになりやすい。ある程度の
困難が予想されるような動作にとりかかる際はつねに、その困難にたいする防衛手段
としてからだが縮こまる。まさにからだのこの硬化症こそ、不必要な努力が生ずる原因で
あり、からだを動作のために正しく組織するのを妨げるものである。能力の限界を拡げる
ためには、執拗な努力を重ねたり、からだをかばおうとしたりすべきではなく、探求と
理解の力によらなくてはならない。
しかも、動作の際のこの自己防衛と不必要な努力は、個人の自信の欠如のあらわれなのだ。
自分の能力にとってはかなり負担になりそうだという意識が生まれると、動作にそなえて
意志を強め、からだを固くするが、実際にはただ自分自身に不要な努力を強いているに
すぎないのだ。からだを固めるというこの努力から生まれる動作は、決して美しくもなく
生き生きとしたものでもなく、二度とくりかえす気をその当人にも起こさせないのである。
そういう苦痛の多いやりかたで当面の目的を達成できたとしても、そのために支払うべき
代償は想像以上に大きいのである。
しばらく休息して、骨盤と床との接触状態に生じた変化とともに、からだの左側と
右側の差異をよく観察すること。[引用ここまで]
さて、ここで説明されている「筋肉の余分な緊張」であるが、これを取ることが、フェル
デンクライスの目標のうち一番わかりやすいものの一つである。この目標のために、まず
横たわって、腕や脚を小さくゆっくりした動作でくりかえし動かす。そして、そのとき、
はじめは、右側の腕と脚だけを動かすことによって、左側の体と比べて、右側の体にどういう
変化が現れたかを確かめる。
ここまでの動きを通して、右側と左側の違いがはっきり感じられただろうか。
ぼんやりとしか感じられなかったかもしれないが、あせる必要はない。自分のペースで
ゆっくり練習を続けていけば、そのとき、体に入っている余分な力に気づき、その力を
抜くことも、そのうちできるようになる。そのときあなたは、いままで思いもしなかった
可能性が自分に開けていることに気づくことだろう。
あと2回で、このフェルデンクライスの入門編も終わりとなる。
一日のうちに少しでも時間をとり、練習を続けてみてほしい。
たったこれだれのことでも、あなたの人生は変わるはずである。
(ネタ本はこちら。「フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく」)