前々項では仰向けになっての、前項ではうつ伏せになっての、右腕の動きを試みたが、
この項では再びあお向けになって、今度は右腕と右脚を同時に動かしてみる。
では、引用を。([]内は、那賀乃の注釈)


 ○腕と脚を同時に動かす
  ふたたび両腕を頭上に伸ばし、両手のあいだを開く。両脚も伸ばし、足のあいだも
 開く。できるだけゆっくり、右脚と右腕を同時に持ち上げてみよう。ごくわずかな
 動きでよく、手の甲とかかとを床から浮かせるだけで充分である。手とかかとが
 ぴったり同時に床に戻るか、それともどちらかが先に床につくかを、注意して確認
 しよう。どちらかが先に床につくのがはっきりしている場合には、そちらが床を
 はなれるのも先になるのがわかるだろう。この動きで動作をぴったり合わせるのは
 たやすくない。普通はごくわずかなずれが、腕と脚のあいだに残るものである。
  ある程度の正確さを実現するには、息を吐きはじめるときにまず腕だけを持ち
 上げる。つぎに息を吐きはじめるときに脚を持ち上げる。そのあとで、吐く息に
 合わせて腕と脚を同時に動かす。こうすれば、腕と脚のずれが改善できる。
 [この段落は、やや意味が取りづらいが、腕と脚を同時に動かすことを一旦やめて、
 まず、吐く息に合わせて腕を上げ、そして下ろし、次にまた、吐く息に合わせて脚を
 上げ、そして下ろし、そうしてから改めて、吐く息に合わせ腕と脚を上げて、そして
 下ろす、ということだろう]


 ○背骨の伸展を感じる
  今度は、腕と脚を交互に上げる。腕を下したまま脚だけを上げる場合、腰椎が
 床から少し浮き上がるかどうか、また、この腰椎の動きが、腕と脚を同時に上げる
 ときには全然起こらないかどうかをよく確かめてみよう。
  腰椎が床から浮き上がるのは、骨盤の前面にくっついている筋肉を使って、脚を
 持ち上げているからである。それに背中の筋肉もまた腰椎の浮き上がるのに関係
 している。この背中の筋肉の働きは必要だろうか、それとも不必要だろうか。
  脚を右へまわす。つまり、股関節、膝、足を右側へ回転させる。そして、脚を
 そのままの位置[向き]でできるだけゆっくり持ち上げる。脚の位置[向き]を変えた
 ことで、腰椎の動きにどのような影響が現れるかを観察しよう。次第にはっきり
 してくるだろうが、もし息をはきはじめる瞬間に、脚と腕を同時に持ち上げるならば、
 腹筋と胸筋が一致して働く。すると腰椎は浮き上がらずに、逆に床に押付けられる。
 腕と脚を持ち上げるのは、ずっと楽になり、くりかえしているうちに、からだが
 伸びるような感じがしてくる。この背骨が伸びる感じは、からだの行動が正しく
 行なわれた場合には、たいてい必ず伴うものである。[引用ここまで]


この項の前段では、腕と脚を一致させて動かすことの難しさがポイントになっている。
引用文中にもある通り、完全に一致させることは簡単ではないので、そのずれを意識し、
どうすればずれを小さくできるか、じっくり試してみてほしい。
後段では、背骨の伸びと腰椎の動きがポイントである。背骨の伸びはこの時点では
感じられないかもしれないがかまわない。それよりも腰椎が浮き上がるかどうかを
よく確かめてほしい。つまり、脚(と腕)を上げたときに、腰の部分が反り上がって
床から離れるだろうか、それとも逆に腰の部分は丸まって床に押しつけられるだろうか。
自分の体がどのように動いているかによく注意し、どうすると腰が浮き上がり、どう
すると逆に腰が沈むことになるのか、いろいろ試しながら体を動かしてみよう。


(ネタ本はこちら。「フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく」)