前項までで、あお向けに横たわり体の様子を確かめたあと、右腕を持ち上げる
動きを繰り返してみた。
この項ではうつ伏せになって右腕を持ち上げる動きをしてみることにする。
うつ伏せになるとき、頭の向きをどうしたらよいか迷うかもしれない。この段階では
あまり気にせず、自分の楽な向きでやってみる。
では、引用を。
([]内は、那賀乃の注釈)

 ○ゆっくりしたなだらかな動き
  うつ伏せになって、両腕両脚をさきほどと同じように広げる。右肘を肩でゆっくりと
 持ち上げて床から浮かせ(手[手首から先のこと]は浮かせる必要はない)、そこから
 ふたたび下す。
  この動きをいまのべたように行うためには、両腕を頭上で拡げて楽にする。つまり、
 両手の間隔が両肘の間隔より狭くなるようにしておかねばならない。
  肺から息を吐き始めるときに腕を上げるようにして、動きを続けよう。これを
 少なくとも20回くりかえす[はじめは10回くらいでもよい]。ゆっくりとした
 なだらかな動きをすれば、またそうでなくてはならないのだが、肘は腕の動きに
 つれて床を「這う」動きをはじめる、つまり、床から浮かび上る前に少し伸びる
 のがわかるだろう。肘が持ち上り、それにつれて手首を引き上げ始めると、手も
 床をはなれかける。


 ○余計な力をとり除く
  この姿勢で手首を持ち上げたとき、手首から先がぶらんとぶら下がる人は滅多に
 いない。たいていのひとは、知らないうちに手首の伸筋(前腕の外側の筋肉群)を
 緊張させているので、手が持ち上って、手の甲が前腕の[外側の]方へそりかえって
 いる。気をつけているうち次第に、この余計な意図しない筋肉の働きはとり除く
 ことができる。
  そうするには、指の筋肉だけでなく、前腕の筋肉をゆるめなくてはならない。
 完全に力が抜けると、手はぶらさがり、掌が前腕の[内側の]方に近づく。そう
 なると、肘を持ち上げても手そのものはだらんとぶらさがるのである。


 ○背中の筋肉を使う
  この動きをくりかえし、肘と手を含め右腕全体を持ち上げるのだが、そのための
 筋肉の努力感が一切なくなり、肩のまわりの筋肉だけがはたらいていると感じ
 られるようになるまで続ける。肩を床から楽に持ち上げるには、背中の筋肉を
 働かせなければならないだろう。そうすれば、肩は肩甲骨と右腕上部と一緒に
 床から離れて浮き上がる。
  ふたたびあお向けになって休息し、右側と左側で、肩、胸、腕が床に接触する
 しかたの違いをよく観察しよう。


この項の動きは、あお向けのときとおおむね同様の動きであるが、うつ伏せに
なっているため、やや苦しさがあるかもしれない。無理はしないこと。
動きの回数も自分の体に合わせて加減してかまわないし、途中であお向けになって
休みを取り、再びうつ伏せになって動きを繰り返してもいい。
ゆっくりとした小さな動きをこころがけ、一回ごとに動きを止めて一旦力を抜いて
から次の動きに入ることを忘れずに。
どこの筋肉に力を入れて動かしているか、余計な力が入っていないか、注意深く
観察しながら動きを繰り返してみよう。
ごく単純な動きではあるが、引用に書かれているとおりにやることは意外と
難しいはずだ。あせらずのんびりと、体の動きを楽しんでみてほしい。


(ネタ本は「フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく」です)