04.筋肉のかくれた働きを発見する
前の項では、あお向けに横たわって体の様子を丁寧に確かめて
みたわけだが、どういうことに気づいただろうか。
フェルデンクライスは、次の引用で、筋肉の基本的トーヌス(無意識に
働いている筋肉の緊張・張力)という点からこのことについて説明している。
筋肉のかくれた働きを発見する
われわれは尾てい骨を一個、腰椎を五個、胸椎を十二個、頚椎を七個もって
いる。骨盤の部分では、どの脊椎骨に一番強い圧力がかかっているだろうか。
腰椎の全部(ウエスト)は床についているだろうか。胸椎、つまり背中の
脊椎骨のうちのどれに一番強い圧力がかかっているだろうか。このレッスンを
はじめればたいていすぐに気づくだろうが、二、三の脊椎骨ははっきり床に
接触しているが、その他の脊椎骨は浮き上がってアーチをつくっている。
不思議なことではないか。なんの動きも努力もせず、床の上に横たわって休む
つもりだったのだから、理屈から言えば、脊椎骨と肋骨はひとつ残らず床まで
下がり、それぞれが少なくともどこか一点で床に接触するはずなのだから。
筋肉を除いた骨格だけだったら、確かにそのように横たわるにちがいない。
したがって、我々は意識していないにもかかわらず、からだのなかの各部に
つながっている筋肉が、その部分を持ちあげているということになるのである。
背骨全体をぴったり床の上につけるためには、どうしても意識していくつかの
部分に力を加えなくてはならない。ひとたびこの意識的な力をゆるめると、力を
加えていた部分はふたたび床から浮き上がる。だから背骨全体を床にくっつける
ためには、筋肉が無意識のうちに行っている働きをやめさせなくてはならないのだ。
意図的な意識的努力では成功できないとすると、どうすればいいか。そこで間接的な
方法を試みてみよう。[引用ここまで]
さて、我々は意識して筋肉に力を入れることで体を動かすことができるのだから、
無意識のうちに筋肉に力が入っていて、しかもその力を意識的には抜くことが
できないというと、奇妙に思う人もいるかもしれない。しかしこれは心臓の動きを
ふつう意識的に止められないのと似た類いのことであり、これから続ける練習によって
「間接的な方法」でその余分な緊張を実際に取り除いてみれば、意識的には抜く
ことのできない力、すなわちトーヌスの存在がはっきりと自覚できるはずである。
次の項ではいよいよ実際の動きに入る。
(ネタ本はこちら。「フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく」)