この世はまぼろし
子どもの頃からぼくは、この世界の実在性については素朴に
信じて生きてきたようだ。
そんなだから、いわゆる思春期というような頃には、どうしてこの世界は
こんなにかっちりしてるんだろう、もっとぐにゃぐにゃとしてれば
いいのに、なんてことも思ったりしてた。
けれど、今にして思えば、この世界は十分ぐにゃぐにゃしてるんで
あって、かっちりしてたのは、幼いぼくの、狭い物の見方のほう
だったんだな。
人が、認識を通してしか、この世界の実在性を捉えられない以上、
「本当に」実在しているものと「本当は」実在しないものを
はっきりと区別するなんてできるわけがないじゃない?
「木」や「水」は実在してると感じやすいけど、「愛」や「正義」
なんて「本当に」あるのかな?
「悪」や「過ち」があるとするなら、「霊魂」や「死後の世界」は
なぜないって言えるんだろう?
少なくても科学にはこの種の問題に答える力はないし、結局は
人それぞれがどう考えるかにつきるんだと思う。
で、ぼくはインド的な考えを借りてきてこう言ってしまおう。
「この世はすべとまぼろしである」と。