・megamouthさんの「好きなことで生きていく」 https://www.megamouth.info/entry/2025/04/30/104014 という記事を読みました。ビジネスにおけるモチベーションの話ということで、思い出したのが、ワインバーグさんの「スーパーエンジニアへの道 – 技術リーダーシップの人間学」 https://amzn.to/43ir3gL という本です。

・さて、megamouthさんの記事、DeNAの南場さんの話から始まります。会社に入って一年目の人間に対して、「仕事としてやる以上、個人的なモチベーションのことばかり言ってたらダメ」、という意味のことを南場さんが言ったというのですが、まあ、もっともなことでしょう。だって、大学のサークルの話じゃなくて、仕事の話ですもんね。

・で、南場さんの話は、けれどもチームにおいてはモチベーションも大切、というふうに続きます。ですから、そこを読まずに、南場はダメだなと思ったら、それはやはり勘違いというものでしょう。 (いや、別にね、南場氏について、どんな勘違いをしようと、そんなの大した問題じゃないんですけど)

・というような前振りの話はともかくとして。

・megamouth さんが、プログラマとして自分にとっておもしろい仕事だけをしていたい、という気持ちは全くよく分かります。

・『lintチェックを無効化して、any使ったら5分で終わる作業を1日かけてGenericにして、lintエラーを出なくする「だけ」の、お前それ費用対効果どうなってんだという作業』をしている自分を見て、 megamouth さんは冷静に、このままではちょっとやばいかも、南場さんのお叱りは愛の鞭かも、などと思うわけです。

・けどですよ、費用対効果の算盤勘定はともかくとして、技術的なパズル遊びが許される職場環境があるのならば、仕事の(たぶん)合間に、そういう遊びをやったからといって、特に悪いこともないんじゃないかとも思いますよね。

・さてそれで、そういう技術遊びをしながら生き延びてきた megamouth さんが、プロジェクトマネジャの仕事を頼まれる。そこでチームの若手のプログラマが「1週間ほどかかる」というタスクについて、急げば二日かな、と考えつつも、「急ぐ必要もないので、1.5週でやりましょう」とゆるい提案をして、チームの信頼を得た、というのが記事の主題なんですね。

・megamouth さんは派遣で働いているわけですが、派遣先のディレクタから、「○○さんはうちの難しいエンジニアとうまくやってるけど秘訣は?」と聞かれて笑顔で誤魔化します。『彼らの内面を暴かないこと、社会人としての外装をうまく取り繕う手伝いをすること、が本当の秘訣だ、が、それを正直に言うほどお人好しではなかった』というわけです。

・この話は、なんとも日本的なエピソードだなと思いますが、これをエンジニアと管理者の「共犯関係」と捉えるのか、それても「共生関係」と捉えるのか、その辺りが人生の分かれ道になるような気はします。

・こういう、ある意味ぬるい「共生関係」も、まったくいいよなと思いつつ、ちょっと別の方向で思い出したのが、ワインバーグさんの本です。

・「スーパーエンジニアへの道 – 技術リーダーシップの人間学」 https://amzn.to/43ir3gL と大層な題名がついていますが、マネジャとして管理する人だけでなく、チームとして仕事をする人なら誰にでも役に立つ内容の本です。といっても、人間同士のやり取りを詳細に分析していますから、そういうことに関心のない人には読みにくいでしょうけれども。

・とはいえ、エンジニア的視点から書かれていますから、一般の心理学関係の本のようなまだるっこしい内容ではなく、人間関係のメカニズムをクリアに理解するための助けになるはずです。

・第12章「人を助けることのむずかしさ」に次の文章があります。(手元に訳本がないため、原文から勝手に訳しています)

『あなたが誰かのモチベーションを高めたいと思うのならば、それが直接的であるにせよ、環境を整えることによるものであるにせよ、まず第一に、あなたが相手を大切に思っているということをきちんと分かってもらうことが必要です。そしてきちんと分かってもらうための一番確実な方法は、実際に相手を大切にすることなのです』

・先ほどの megamouth さんのやり方も、実はここに書かれたことの実例になっているとは思いませんか? エンジニアは管理者から尻を叩かれながら働きたいとは思わないでしょう。自分が気持ちよく働ける環境を、管理者には作ってもらいたいと思っているはず。エンジニアのそうした気持ちを大切に思うからこそ、megamouth さんはゆるい提案をすることによってそれを実際に行動として示し、その結果エンジニアの信頼を勝ち取ったわけです。そしてそうなれば、自然にエンジニアのモチベーションも上がるというものです。

・……というような解説が本当か嘘かはともかくとして、ワインバーグさんの本には、コンサルタントとしての彼の経験に基づいた様々なエピソードが披露されていますので、興味が湧いた方はどうぞご一読してみてくださいね。

・てなわけで、みなさん、ナマステジーっ♪

☆ジェラルド・M・ワインバーグ「スーパーエンジニアへの道 – 技術リーダーシップの人間学」 https://amzn.to/43ir3gL (原題: Becoming a technical leader : an organic problem-solving approach)