※記事最後に掲載していた会田氏のエログロ画像は、リンクを掲載する形に変更いたしました。
京都造形芸術大学が開催した、画家の会田誠氏らの公開講座を受けた美術モデルの女性(この記事ではオーさんとします)が、環境型のセクハラを受けたとして大学を訴えたことが、ネットの片隅で話題になっています。
この記事では錯綜する情報を整理し、訴えられていない会田誠氏と、大学を訴えた女性オーさんには「ほとんど問題は見られない」ことと、
公開講座を主催した大学には大きな問題があること を説明します。
ちなみにぼくは、会田さんの作風は割と好きなんですが、題材にはちょっとエグすぎるものもあるなあと思ってます。
また被害女性は「おばかなアカデミズム」にやられちゃって、ホントに可哀想だと思います。
美術モデルをしている女性オーさんの訴えはこうです 過激なエログロ画家・会田誠氏はこのようにもっともな説明をしています 古っぽくて営利主義的な大学運営こそが問題なんじゃない? 「問題」を解決するため、会田氏が積極的な関与をすることを提案します。 [追記 2019.3.6] 本記事を書いた意図の説明です。 [追記#2 - 2019.3.6] 講座を企画した鈴木芳雄の発言です。 美術モデルをしている女性オーさんの訴えはこうです オーさんは、京都造形芸術大学の通信教育部を卒業後、美術モデルをやっている39歳の女性です。
彼女は、京都造形芸術大学・東京藝術学舎で開かれた社会人向け公開講座(全5回、2018年4月から6月にかけて開講)
『人はなぜヌードを描くのか 見たいのか』 を受講しました。
三回目の講師の会田氏は、過激なエログロの画風で知られる画家ですが、オーさんはそのことを知らなかったといいます。
18年4月~6月に全5回行われた「ヌードを通して、芸術作品の見方を身につける」という社会人向け公開講義を受講したとのこと。会田氏がゲスト講師を務めた第3回の講義では「涙を流した少女がレイプされた絵」「全裸の女性が排泄している絵」「四肢を切断された女性が犬の格好をしている絵」などがスクリーンに映し出されたといい、会田氏は「デッサンに来たモデルをズリネタにした」などと下ネタを口走ることがあったという。女性は大学側に抗議したものの、その後も別のゲスト講師の講義で勃起した男性の写真の投影などがあったといい、急性ストレス障害の診断を受けていた。
ヌードの美術講義が「セクハラ」と大学を提訴 講師の会田誠氏が反論 - ライブドアニュース 会田氏の講義の後にオーさんは「すぐに、大学のハラスメント窓口に苦情を申し立てた*1」*2とのことで、この時点で大学側がきちんと対応できなかったことが問題の始まりと思われます。
(女性は)学校側に抗議。学校側は事実を認める一方で、示談の条件として校舎の立ち入りや学校関係者との接触を禁じるなどの対応をし、「外部に出したら名誉毀損として法的措置を検討する」などと大原さん側に伝えたという。
会田誠さんらにゲスト講義で自慰写真など見せられ「セクハラ受けた」 美術モデルの女性が学校法人を提訴 | ハフポスト オーさんは、
「講義内容が本当にひどいものだった」「セクハラを訴えたあとも、大学側の対応が、教育者としてあるまじき姿だった」「生徒を守ってくれないのは本当に残念だ」*3
「有名人を守るため、生徒側の口封じをした教育者としてあるまじき行為が許せなかった」*4
と語っています。
なお、三回目で嫌な思いをしたのに、なぜその後も講義を受け続けたのか疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、こうした公開講座というものは有料ですから、苦情を申し立てた上で受講を続けたことは特別おかしなことではないでしょう。問題は、五回目にも同じようなことが起こる可能性があったのに、十分な対応をしなかった大学側の姿勢ということになるはずです。
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さて、「講義内容が本当にひどいものだった」のかどうかを、会田氏の発言を見て確認してみましょう。
過激なエログロ画家・会田誠氏はこのようにもっともな説明をしています 会田氏はオーさんの記者会見の報道を受けて、ツイッターで詳しく事情を説明しています。*6
(その日の講義は)学者や研究者のやる講義からはほど遠い、実作者としての言葉だった。
落ち着いた文化教養講座をイメージしていたなら、すごいギャップがあったでしょう。
そもそも西洋から来た「ヌード」という美術のジャンルが、歴史的に「妙なもの」であるという点を軸に話したつもりでした。研究者でないので結論なくグダグダ話しただけと思いますが。全体的には「人類にとって芸術とは何か」という僕の人生を賭けたシリアスな問いの一環だったはずです。
「モデルをズリネタに」云々という文字がありましたが、おそらくこういう文脈で出てきたものです。美大油絵科の学生としてみんなとヌードモデルを描いていた時に、はたと気づいた。裸の女性が真ん中にいて、たくさんの男たちが(当時美大は男子学生が多かった)それを凝視している。
そして言外に欲情は禁じられてる。これってなんなんだ? 何ゆえなんだ? 歴史的経緯は? 美術・芸術の領域(具体的には芸大上野キャンパス)から一歩出た世間は、まったく違う風か吹いているじゃないか? どっちが嘘をついているんだ? どっちが病的なんだ? そういう問いです。
だからこそ、このあたりの僕の主張は強めになってしまう。近代美術を愛している人々の心の平和を根底から揺すぶってしまう。今回の件と関係あるかどうかはわからないけれど。
会田氏の説明は、自作と講義内容が決してセクハラを意図したものではなく、「今日的な意味で十分に芸術的であること」を明快に説明しています。
また、オーさんが会田氏の講義によって精神的苦痛を受けたことについては、ご自分が訴えの対象になっていないこともあるのでしょう、まったく触れていません。
会田氏の画風は極めて特殊なものですから、これに接することで精神的苦痛を感じる方は当然いるだろうと思います。
とすれば、そうした点について事前に大学側が十分に配慮をしていたか、また、オーさんからの抗議があった時点できちんとそれに答えたかどうかが問題になってきます。
なお、オーさんは会田氏が「酒に酔ったような状態で現れた」*7と言っているのですが、これについては会田氏は次のようにはっきりと否定しています。
僕の(研究者でも学者でもないのでこれしかできない)フリートーク的スタイルと、肝臓の弱りからくる赤面(30年にわたる飲酒が原因で、僕の知り合いならみんな知ってること)ですが、この時はけして【まだ】飲んでません。彼女の単純な誤解です。
https://twitter.com/makotoaida/status/1100732706759962625 古っぽくて営利主義的な大学運営こそが問題なんじゃない? すでに書いたように、五回中三回目の会田氏の講義の後、オーさんは「すぐに、大学のハラスメント窓口に苦情を申し立てた*8」*9にも関わらず、大学側はこれに十分な対応をすることができなかったと思われます。
その結果、五回目の写真家・鷹野隆大氏の講義で同様の「事件」が再発してしまったわけです。
大学側の問題対応は、この後の話し合いでピークに達します。
「大学側は同年7月、環境型セクハラについて、対策が不十分だったと認める内容の調査報告書をまとめた」*10にも関わらず、次のような示談条件をオーさんに伝えたというのです。
学校側は事実を認める一方で、示談の条件として校舎の立ち入りや学校関係者との接触を禁じるなどの対応をし、「外部に出したら名誉毀損として法的措置を検討する」などとオーさん(本記事筆者により仮名化)側に伝えたという。
