「哲学者というならず者がいる」中島義道、新潮社2007、1365円
最後の二節、「先生、自殺していいですか?」「先生、自殺していいですか?(承前)」は、
死にたい、と思い詰める人間が、身近にいるときに、人はどう対処できるのか、
その限界と可能性が、ひしひしと迫ってくる筆致で書かれていて共感できる。
ここのところ、気持ち的にくたびれているので、
しばらくこのページの更新は休みます。
とりあえず、三月いっぱいは休みということで、
よろしく。
「スローブログ宣言!」鈴木芳樹(技術評論社)
weblog というメディアは、個人が気軽に情報を発信できるという意味では、なかなか使えるメディアである。
しかし、これを単なる日記以上の、読めるものとして書いていこうと考えると、途端に一筋縄ではいかないことに気づくことになる。
「スローブログ宣言!」は、そのへんのところに関連して、著者の経験をもとに、ある適当な距離の取り方で weblog とつきあう方法が書かれていて、なかなか興味深い。
「がりがりマネタイズしよう」というのではなく、「のんびり楽しくブログを書いていきましょうよ」という感じの本です。
わたしのこの weblog もまだまだ読めるものになっとりませんが、これからボチボチがんばりたいと思います、はい。
「斎藤一人のツキを呼ぶ言葉」清水克衛(三笠書房・知的生き方文庫)
この本は、清水克衛という本屋の店主が、銀座まるかんの斎藤一人の言葉について
書いたもの。斉藤一人は、ダイエット食品「スリムドカン」などを売って、節税
しないもんだから長者番付トップになるような商売上手。
だから、この本は、「金持ちになるためには」みたいな雰囲気で書いてあるんだけど、
どっちかというと、それはよこちょの話で、人生こんなふうに生きた方が楽しいよね、
っていうことが中心になってる。
二百ページちょっとの文庫本だけど、ちゃんと読んでちゃんと実践すれば、これだけでも
ずいぶん人生楽になるかもって本です。
いよいよ、フェルデンクライス入門編の最終回である。
今までの項では体の右側だけを動かしてきたわけだが、この項では同じ動きを体の
左側で繰り返し、さらに両側を合わせた動きを練習する。したがって文章の量は
今までより少ないが、体を動かすのに要する時間は、今までが半分弱で、この項が
半分強ということになるので、ご注意を。
なお、この一連の練習に要する時間として、フェルデンクライス自身が目安として
あげているのは、慣れないうちは45分くらい、慣れてくれば20分くらいという数字
だが、人それぞれのペースによって変わってくるものなので、自分なりに気持ち
よくできるよう工夫してほしい。
それでは引用を([]内は、那賀乃の注釈)。
○左側の動き
今までこのレッスンでくわしくのべたすべての動きを、からだの左側でくり
かえす。
[参照 「あお向け・右腕の動き」「うつ伏せ・右腕の動き」「あお向け・右腕と右脚の動き」
「うつ伏せ・右腕と右脚の動き、そしてうつ伏せと仰向けで右腕・右脚・頭を同時に動かす」]
○対角線の動き
からだの左側を使った動きが終わったら、右腕と左脚を一緒に、できるだけ
ゆっくり持ち上げ、この動きを25回[はじめは10回ほどでよい]くりかえす。脊椎骨と
肋骨の相互の位置関係の変化を観察し、からだの床につく部分が、片側の腕と脚を
一緒に上げたあとに確認した部分とは全くちがっていることをよくつかもう。
少し休息したあと、左腕と右脚を一緒に25回[上と同じ]持ち上げ、終わったら
休息する。つぎに、両腕と両脚を頭と一緒に、吐く息に合わせて持ち上げる。この
動きも25回[上と同じ]くりかえす。休息をとったあと、頭は床につけたまま、両腕
両脚だけを持ち上げる。
最後にあお向けになり、このレッスンの一番はじめにしたように、かかとから
頭まで、床に接触しているあらゆる部分を観察しよう。生じた変化を、とくに背骨に
そってよくつかむこと。
さて、ここまでの練習を実際にやってくれた方には、はっきりと分ることと思うが、
単純な動作の繰り返しを、その動きにしっかり注意を向けながら十分な回数行う
ことで、確かに体のあり方が変わってくるのである。ふだん無意識のうちに緊張して
体に不要な力が入り、あるいは長年の癖で体が縮こまったり固くなったりして
しまっている、そういった状態が我々の間に見られるごく普通の姿なのだが、その
不必要な力が抜け、縮こまっていた体がすっと伸びて足取りも軽くなる。これが
私がフェルデンクライスをやってみての実際の感想である。
ただし、一人でやっているとなかなかそこまでは行けないのも事実で、この練習法に
興味を持たれた方は、一度実際にレッスンを受けてみるのもよいだろう(たとえば
こちらのページ参照。一回二時間3000円なのでそんなに高くはないですね)。私自身は
正規のレッスンを受けたことはないが、知り合いが芝居の稽古に取り入れており、
そこで何人かの仲間とともに動きの指示を受けながらやってみると、これがなかなか
感じがよいのである。
また、それほどしっかりやらなくても、それ相応の効果はある。私の場合、寝床の
中で、手はお腹の横に普通において寝て、肩だけ持ち上げたり、膝だけ持ち上げたり、
適当にアレンジしてやっているが、それでも十分なリラックス効果を感じる。気が
向いたときに自分のやりたいようにアレンジしてやってみるだけでも、続けていく
うちにあなたの体に対する意識は確実に変わってくるだろう。
今回取り上げた部分はネタ本のうち、ほんの10ページほどにすぎないが、たった
これだけの中にも様々なヒントが詰まっている。それを生かすも殺すも結局は
あなた次第である。
というわけで、このページが少しでもあなたの役に立ちますように、そして
あなたの毎日が少しでも楽しいものになりますように!
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前々項ではあお向けになって右腕と右脚を同時に持ち上げる動きを試み、前項ではその
動作によって取り除かれるはずの普段の余分な筋肉の緊張と背骨の縮みについて解説
した。
この項では、まずうつ伏せになって右腕と右脚を持ち上げてみる。では引用を。
([]内は、那賀乃の注釈)
○どうすれば楽に動けるか
うつ伏せになり、両腕を頭上に伸ばして開く。両腕もひろげる。ゆっくりと右腕と
右脚を一緒に持ち上げる。腕と脚を上げるとき、頭の位置に注意しよう。右を向いて
いるか、左を向いているか、それとも真下を向いているか。さて吐く息に合わせて、
腕と脚を持ち上げる。まず右頬を床につけて、つまり左側を向いてこの動きを数回
くりかえす。つぎに頬を床につけて、最後に左頬を床につけて、同じくくりかえす。
この三つの姿勢のときに必要な力の量を比較し、どの姿勢が一番やりやすいかを
判断する。多少とも調整がうまくできているからだならば、左の頬を床につけたときが
一番楽な姿勢になるだろう。動きを25回くらい[はじめのうちは10回ほどでいい]くり
かえし、床にかかるからだの圧力が、胃の左側の胸と骨盤の間に移動するのが次第に
はっきりしてくるのに注意しよう。
うつ伏せのまま、さらに右腕と右脚を先程と同じように持ち上げる動きを続けるの
だが、今度は、動きに合わせて頭も持ち上げ、手の動きを目で追うようにする。25回
[前述と同様]くりかえしたあと、あお向けになって休息をとる。次は、あお向けの
まま、いまと同じように頭と一緒に右の腕と脚を上げる動きをくりかえす。練習前に
くらべて、床に横たわるからだの状態がどう変わってくるかに注意を向ける。一番
強い力がかかるのはどこか正確につかもう。25回[前述と同様]この動きをくりかえして
から、休息する。
○どちらの眼の開きが大きいか
立ち上がってしばらく歩きまわり、からだの右側と左側の感覚のちがい、両腕の長さの
はっきりとしたちがい、両脚の長さのちがいを確かめよう。次に顔を調べてみよう。
鏡を見ると、顔の半分が生き生きして、そちら側のしわやひだが目立たなくなり、一方の
眼がもう一方の眼より大きく開いているのがわかる。どちらの眼だろうか。
今までそれぞれの動きのあとに行った点検のときに、からだの片側の腕と脚が、反対
側の腕と脚よりもだんだん長くなってくることに気がついていたかどうか思い出して
みよう。からだの左右の感覚の差異を抑えつけようとせず、できるだけ持続させ、次第に
弱まって最後に消えてゆくまで観察を続けよう。悩み事とか極度の緊張のような注意力を
乱す妨害に出会わなければ、この差異は相当長時間、すくなくとも数時間ははっきりと
残る。その時間のあいだ、からだのどちら側の働きがよく、どちら側の働きがなめらかに
できるか観察しよう。
さて、この項ではまずうつ伏せになって顔の向きを吟味するわけだが、真下を向いて額を
床につけるのは鼻が邪魔になってかなり苦しい姿勢に思える。こうするかわりに顎の下を
床につけて顔は水平方向に真正面を向いた方が楽かもしれない。
また引用では左頬を床につけ右に顔を向けるのが一番楽なはずと書いているが、わたしの
場合、たぶん首から肩にかけて余分な凝りがあるせいだろう、その向きだと首に無理な
負担を感じてしまう。書かれていることを鵜呑みにせず、自分の体に合わせて試してみて
ほしい。
そして、この項のもうひとつのポイント、そしてある意味でフェルデンクライスの最大の
特長とも言えるところだが、ここまで体の右側だけを丁寧に動かして、その変化を見て
きた。今回の一連の練習では、ここまでで右側の練習は一通り済んだことになる。ここ
までの練習が終わったら、ゆっくり立ち上がり、そしてゆっくり歩きながら自分の体の
様子をじっくり確かめてみてほしい。あなたが体の感覚に敏感ならば、右側と左側の
違いが劇的に感じられるだろうし、そうでなくても多くの人がいい意味でなんらかの
感覚の変化を感じることだろう。
このフェルデンクライスの入門編もいよいよ次回で最終回である。
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前項では、あお向けになって、右腕と右脚を動かし、腰椎の動きと背骨の伸びる感じに
注意してみた。この項では背骨の縮みと筋肉の余分な緊張の関係について解説する。
不必要な努力はからだを短縮させる
ほとんどあらゆる場合に、筋肉に残る余分の緊張は、背骨を短縮させる原因となる。
動作につきまとう不必要な努力は、からだを縮小させることになりやすい。ある程度の
困難が予想されるような動作にとりかかる際はつねに、その困難にたいする防衛手段
としてからだが縮こまる。まさにからだのこの硬化症こそ、不必要な努力が生ずる原因で
あり、からだを動作のために正しく組織するのを妨げるものである。能力の限界を拡げる
ためには、執拗な努力を重ねたり、からだをかばおうとしたりすべきではなく、探求と
理解の力によらなくてはならない。
しかも、動作の際のこの自己防衛と不必要な努力は、個人の自信の欠如のあらわれなのだ。
自分の能力にとってはかなり負担になりそうだという意識が生まれると、動作にそなえて
意志を強め、からだを固くするが、実際にはただ自分自身に不要な努力を強いているに
すぎないのだ。からだを固めるというこの努力から生まれる動作は、決して美しくもなく
生き生きとしたものでもなく、二度とくりかえす気をその当人にも起こさせないのである。
そういう苦痛の多いやりかたで当面の目的を達成できたとしても、そのために支払うべき
代償は想像以上に大きいのである。
しばらく休息して、骨盤と床との接触状態に生じた変化とともに、からだの左側と
右側の差異をよく観察すること。[引用ここまで]
さて、ここで説明されている「筋肉の余分な緊張」であるが、これを取ることが、フェル
デンクライスの目標のうち一番わかりやすいものの一つである。この目標のために、まず
横たわって、腕や脚を小さくゆっくりした動作でくりかえし動かす。そして、そのとき、
はじめは、右側の腕と脚だけを動かすことによって、左側の体と比べて、右側の体にどういう
変化が現れたかを確かめる。
ここまでの動きを通して、右側と左側の違いがはっきり感じられただろうか。
ぼんやりとしか感じられなかったかもしれないが、あせる必要はない。自分のペースで
ゆっくり練習を続けていけば、そのとき、体に入っている余分な力に気づき、その力を
抜くことも、そのうちできるようになる。そのときあなたは、いままで思いもしなかった
可能性が自分に開けていることに気づくことだろう。
あと2回で、このフェルデンクライスの入門編も終わりとなる。
一日のうちに少しでも時間をとり、練習を続けてみてほしい。
たったこれだれのことでも、あなたの人生は変わるはずである。
(ネタ本はこちら。「フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく」)
前々項では仰向けになっての、前項ではうつ伏せになっての、右腕の動きを試みたが、
この項では再びあお向けになって、今度は右腕と右脚を同時に動かしてみる。
では、引用を。([]内は、那賀乃の注釈)
○腕と脚を同時に動かす
ふたたび両腕を頭上に伸ばし、両手のあいだを開く。両脚も伸ばし、足のあいだも
開く。できるだけゆっくり、右脚と右腕を同時に持ち上げてみよう。ごくわずかな
動きでよく、手の甲とかかとを床から浮かせるだけで充分である。手とかかとが
ぴったり同時に床に戻るか、それともどちらかが先に床につくかを、注意して確認
しよう。どちらかが先に床につくのがはっきりしている場合には、そちらが床を
はなれるのも先になるのがわかるだろう。この動きで動作をぴったり合わせるのは
たやすくない。普通はごくわずかなずれが、腕と脚のあいだに残るものである。
ある程度の正確さを実現するには、息を吐きはじめるときにまず腕だけを持ち
上げる。つぎに息を吐きはじめるときに脚を持ち上げる。そのあとで、吐く息に
合わせて腕と脚を同時に動かす。こうすれば、腕と脚のずれが改善できる。
[この段落は、やや意味が取りづらいが、腕と脚を同時に動かすことを一旦やめて、
まず、吐く息に合わせて腕を上げ、そして下ろし、次にまた、吐く息に合わせて脚を
上げ、そして下ろし、そうしてから改めて、吐く息に合わせ腕と脚を上げて、そして
下ろす、ということだろう]
○背骨の伸展を感じる
今度は、腕と脚を交互に上げる。腕を下したまま脚だけを上げる場合、腰椎が
床から少し浮き上がるかどうか、また、この腰椎の動きが、腕と脚を同時に上げる
ときには全然起こらないかどうかをよく確かめてみよう。
腰椎が床から浮き上がるのは、骨盤の前面にくっついている筋肉を使って、脚を
持ち上げているからである。それに背中の筋肉もまた腰椎の浮き上がるのに関係
している。この背中の筋肉の働きは必要だろうか、それとも不必要だろうか。
脚を右へまわす。つまり、股関節、膝、足を右側へ回転させる。そして、脚を
そのままの位置[向き]でできるだけゆっくり持ち上げる。脚の位置[向き]を変えた
ことで、腰椎の動きにどのような影響が現れるかを観察しよう。次第にはっきり
してくるだろうが、もし息をはきはじめる瞬間に、脚と腕を同時に持ち上げるならば、
腹筋と胸筋が一致して働く。すると腰椎は浮き上がらずに、逆に床に押付けられる。
腕と脚を持ち上げるのは、ずっと楽になり、くりかえしているうちに、からだが
伸びるような感じがしてくる。この背骨が伸びる感じは、からだの行動が正しく
行なわれた場合には、たいてい必ず伴うものである。[引用ここまで]
この項の前段では、腕と脚を一致させて動かすことの難しさがポイントになっている。
引用文中にもある通り、完全に一致させることは簡単ではないので、そのずれを意識し、
どうすればずれを小さくできるか、じっくり試してみてほしい。
後段では、背骨の伸びと腰椎の動きがポイントである。背骨の伸びはこの時点では
感じられないかもしれないがかまわない。それよりも腰椎が浮き上がるかどうかを
よく確かめてほしい。つまり、脚(と腕)を上げたときに、腰の部分が反り上がって
床から離れるだろうか、それとも逆に腰の部分は丸まって床に押しつけられるだろうか。
自分の体がどのように動いているかによく注意し、どうすると腰が浮き上がり、どう
すると逆に腰が沈むことになるのか、いろいろ試しながら体を動かしてみよう。
(ネタ本はこちら。「フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく」)