最近あらためて思うのは、たぶん、やはり、この世界は完璧なのであって、
それがわからないのは、こちらの意識が十分磨かれていないからなんじゃない
かなぁということ。
フツーの人間らしさから言ったら、戦争はいけないとか、
逆に、偽悪的になれば、人を食い物にして何が悪いとか、
そんなふうな気持ちになったりするわけだけど、そういう、
それぞれの多様性を飲み込んで、ここに実現している世界の凄さ、
恐ろしさ、それを恐れず、嫌がらずに見たならば、とにかく今は
これなんだし、それでよいとしか言えないわけだし、
もし、あしたを言うならば、あしたの別の風を楽しもう
としか言えないことになるはずだし、あしたをこうしようと
思うのはたぶんそれでいいんだろうけど、あしたがそうならない
からと言って嘆くのはやっぱり愚か者という気がする。
いや、もちろん、愚か者でいいんだよ。
おいらもじゅうぶんおろかもんだし。
さて、人生においてさまざまな困難に出会うことは
避けがたい。
困難に出くわしたとき、悲しみに襲われたり、
怒りが湧き上がったり、気持ちの波にさらわれる
こともありがちなこと。
そしてその気持ちの波にさらわれたことで
さらに自分の気持ちが落ち込むことも、
人によっては自然の成り行き。
けれど、このいずれの局面もがまったく自然なことであって、
それぞれの局面を否定せず受け止めればいいことに気づき、
それを受け止められない自分を許し、ゆっくりと変わってゆく
自分を待つことができれば、そして、その先にやってくる
真実の恐怖と向かい合うだけの力を蓄えることができるならば、
ひとは自由への道を歩き続けることができるだろう。
「精霊の呼び声―アンデスの道を求めて」エリザベス・B. ジェンキンズ著、高野昌子訳 (翔泳社1998) アメリカで心理学をやっていた女性がペルーに行って
シャーマニズムの修行をするお話。
カルロス・カスタネダの著作に比べるとやや甘口な印象を
受けるけど、インカの流れの世界観は、カスタネダの描く
トルテカの世界観と重なりつつも、違いもさまざまあり、
新鮮。
おもしろい本だと思います。
人は田舎や海岸や山にひきこもる場所を求める。
君もまたそうした所に熱烈にあこがれる習癖がある。
しかしこれはみなきわめて凡俗な考え方だ。
というのは、君はいつでも好きなときに
自分自身の内にひきこもることができるのである。
--マルクス・アウレーリウス「自省録」(神谷恵美子訳、岩波文庫四十九頁)
「戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方―エコとピースのオルタナティブ」田中優 (合同出版 2005)
「世界から貧しさをなくす30の方法」田中優、樫田秀樹 (合同出版 2006)
那覇のモノレールの県庁前駅でおりて国際通りをわたると
まあまあの大きさの本屋があって、沖縄慰霊の日が六月二十三日に
あった関係なのか、戦争関係の本のコーナーがあったので覗いてみると、
そこに二冊、未来バンクをやってる田中優の本がおいてあって、
といっても一冊は共著だが、言ってみれば、戦争はなぜ起きるのか、
どうやったらとめることができるのか、という本である。
戦争はないほうがいいと思う。
だが、なくすことができるかと考えると、かなり難しいな、と思ってしまう。
なくせないにしても、無用な殺生はすくないほうがいいと思うし、
その線に沿って生きていきたいとも思う。
ぼくは田中優のように熱心に環境や戦争の問題に関わることはしないし、できない。
けれど、会って話せば、田中優もただのおっさんで、こっちはなにかといえば
わけのわからないゴクツブシ。
それでべつに問題ない。
それぞれがそれぞれのやりかたで生きるだけ。
どこかで重なり、どこかでつながる。
そういうことを楽しめばいいんだと思ってる。
沖縄の本屋で二冊の本を立ち読みして、そんなことを思った。
「ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代」武井麻子(大和書房2007)
ぼくは精神障害の人のための作業所でアルバイトをしている。
で、肉体労働でも、頭脳労働でもないその仕事を精神労働と考えた。
その世界では、感情労働というらしい。まだあまり一般的でないけれど。
だいぶ前から、工業化された国で、第三次産業、サービス産業が
増えていることが言われているが、おおむね、それがこれである。
著者の知る看護の現場の話が多いから、ある意味極端な内容であり、
だからこそかえって、現代を象徴している気がする。
どうすればいいか、というところまでは踏み込んでいないのが
残念といえば残念だが、簡単に言えるわけもないので、むしろ
正直な態度として受け止める。
医療・福祉系の仕事の人はもとより、現代のそうした側面に興味を
持つ人には勧めたい。
なお、aera の関連記事、[こちら]にあり。
「チャンスがやってくる15の習慣」レス・ギブリン(ダイヤモンド社)
セールスマン向けの本ではあるのだが、人間関係をよくするにはどうしたらよいか、
という点で、シンプルに書いてあり、知識ではなく行動を重視するという点において
なかなかよい本だと思う。立ち読みでも十分だが、買って手元においても損はないかも。
「神を見た犬」ディーノ・ブッツァーティ著、関口英子訳、光文社文庫2007
イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティの短編集。
「アインシュタインとの約束」では悪魔がアインシュタインと取引をする。
アインシュタインには申し訳ない話だが、人間の愚かさを皮肉ったすてきな掌編。