田中優の本、二冊

「戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方―エコとピースのオルタナティブ」田中優 (合同出版 2005) 「世界から貧しさをなくす30の方法」田中優、樫田秀樹 (合同出版 2006) 那覇のモノレールの県庁前駅でおりて国際通りをわたると まあまあの大きさの本屋があって、沖縄慰霊の日が六月二十三日に あった関係なのか、戦争関係の本のコーナーがあったので覗いてみると、 そこに二冊、未来バンクをやってる田中優の本がおいてあって、 といっても一冊は共著だが、言ってみれば、戦争はなぜ起きるのか、 どうやったらとめることができるのか、という本である。 戦争はないほうがいいと思う。 だが、なくすことができるかと考えると、かなり難しいな、と思ってしまう。 なくせないにしても、無用な殺生はすくないほうがいいと思うし、 その線に沿って生きていきたいとも思う。 ぼくは田中優のように熱心に環境や戦争の問題に関わることはしないし、できない。 けれど、会って話せば、田中優もただのおっさんで、こっちはなにかといえば わけのわからないゴクツブシ。 それでべつに問題ない。 それぞれがそれぞれのやりかたで生きるだけ。 どこかで重なり、どこかでつながる。 そういうことを楽しめばいいんだと思ってる。 沖縄の本屋で二冊の本を立ち読みして、そんなことを思った。

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「ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代」武井麻子(大和書房2007) ぼくは精神障害の人のための作業所でアルバイトをしている。 で、肉体労働でも、頭脳労働でもないその仕事を精神労働と考えた。 その世界では、感情労働というらしい。まだあまり一般的でないけれど。 だいぶ前から、工業化された国で、第三次産業、サービス産業が 増えていることが言われているが、おおむね、それがこれである。 著者の知る看護の現場の話が多いから、ある意味極端な内容であり、 だからこそかえって、現代を象徴している気がする。 どうすればいいか、というところまでは踏み込んでいないのが 残念といえば残念だが、簡単に言えるわけもないので、むしろ 正直な態度として受け止める。 医療・福祉系の仕事の人はもとより、現代のそうした側面に興味を 持つ人には勧めたい。 なお、aera の関連記事、[こちら]にあり。

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「狂気をくぐりぬける」メアリー・バーンズ、ジョゼフ・バーク著、弘末明良、宮野富美子訳 r.d.レインが関わっていた共同住居キングスレーホール、 そこでは精神病の患者も医療従事者も正式な治療関係とは 離れて生活をしていた。1960年代後半のことである。 本書はそこで暮らしたメアリー・バーンズの「狂気」の記録であり、 メアリーに寄りそい彼女を支えた医師ジョゼフ・バーグの視点からの 記録も添えられている。 当のr.d.レインはちょっと顔をだす程度だが、彼の実践を知る意味では 興味深い。 重たい本なので、軽い気持ちで読むこととはおすすめしない。

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「チャンスがやってくる15の習慣」レス・ギブリン(ダイヤモンド社) セールスマン向けの本ではあるのだが、人間関係をよくするにはどうしたらよいか、 という点で、シンプルに書いてあり、知識ではなく行動を重視するという点において なかなかよい本だと思う。立ち読みでも十分だが、買って手元においても損はないかも。

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「神を見た犬」ディーノ・ブッツァーティ著、関口英子訳、光文社文庫2007 イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティの短編集。 「アインシュタインとの約束」では悪魔がアインシュタインと取引をする。 アインシュタインには申し訳ない話だが、人間の愚かさを皮肉ったすてきな掌編。

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「エスリンとアメリカの覚醒―人間の可能性への挑戦」W.T.アンダーソン著、伊藤 博 訳、誠信書房1998 1960年代から1980年代へかけての esalen institute の記録。 日本ではエサレン研究所として紹介されているが、ニューエイジ的セミナーハウスとでも 呼ぶべきか。 ビート、ヒッピー、サイケデリクス、人間性心理学。 アメリカの西海岸的文化状況の流れに関心のある人には面白いかも。

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門 眞一郎氏の記事「キングズレイ・ホール異聞」。 r.d.レインらが運営していた治療をおこなわない「治療」共同体、キングズレイ・ホールについて書かれている。 レインらがしていたことと合わせ、その日本での紹介の様子も書かれ興味深い。

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アラン・ワッツ

私たちが世界というものを正常に知覚し評価するならば、それは主観的なものだが 一つの集団の悪夢なのだ。実際の現実についてのごく普通の感覚 -- たとえば月曜の 朝起きたときに見る世界の感覚 -- は、社会化された条件づけと抑圧の一つの構造 なのだ。つまりそれは選択された不注意の体系なのであり、それによって私たちは、 現代文明生活のゲームのルールと一致しないような、自然の中の諸局面・諸関係を 除外してしまうように教え込まれているのだ。 --- アラン・ワッツ (「エスリンとアメリカの覚醒」w.t.アンダーソン著、伊藤博訳、誠信書房より 曾孫引き)

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「哲学者というならず者がいる」中島義道、新潮社2007、1365円 最後の二節、「先生、自殺していいですか?」「先生、自殺していいですか?(承前)」は、 死にたい、と思い詰める人間が、身近にいるときに、人はどう対処できるのか、 その限界と可能性が、ひしひしと迫ってくる筆致で書かれていて共感できる。

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としべえ2.0β

北インド・ハリドワル辺りに出没中。

物好きな物書き

宇宙のど真ん中